第71回 自民大勝で円安再開?!皆が同じシナリオとなれば慎重に 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第71回 自民大勝で円安再開?!皆が同じシナリオとなれば慎重に 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

大方の予想通り、参院選は自民大勝となりました。日経平均もドル/円相場も参院選前から上昇トレンドを形成しており、自民大勝、アベノミクス相場再び、という期待を織り込んでいましたが、月曜の日経平均は68円高、ドル/円相場は東京時間に100.60円台を付けたものの、その後はじり安、99円台へ沈んでの推移です。一部にあった予想通りの結果が出ることでの「材料出尽くしの売り」をこなしての底堅い推移と見るか、意外に上昇力が鈍いと見るか、見方は分かれる所ですが、ここで材料出尽くしだとした利食いの売りに押され大きく崩れることがなければ、環境的にはポジティブです。日経平均は5月23日の高値レベルである16,000円を超え、ドル/円相場も104円台乗せとなる円安ドル高が進行するという期待がますます膨らんでくるものと思われます。

日本はデフレを脱却するために異次元緩和に踏み切ったばかりです。円がますます安くなる政策をスタートしたばかりですので、円安へのバイアスがさらに強まることに異論はありません。おまけにねじれ解消となったことで安倍内閣の成長戦略第4の矢への期待も高まり株も買われるでしょう。

一方で、米国は5月22日のFRBバーナンキ議長の講演以降、議長の発言の真意を巡ってドルや米国株は神経質に動く局面もありましたが、半期議会証言以降は株価も安定して買われています。出口が最も近いであろう米国の景気回復は本物であるという安心感が株価に表れているとの解釈もできます。

7月第1週には英国と欧州もフォワードガイダンスを導入し、金融緩和の長期化メッセージを発信しており、ここまでの各国の金融政策を素直に解釈すれば、年後半は出口に近いドルが最も強く、円、ユーロ、ポンドが売られるだろうというストラテジーが最も主流となってくるものと思われます。私も7月に入って、中銀に逆らうな、ドルが最強通貨になる?!というような内容のコラムを書いたところでしたが、、、。

しかし、誰もが同じ方向を見始めることへの警戒を忘れてはなりません。アベノミクス相場も否定的懐疑的な声があるうちは上昇し続けましたが、5月に入っても尚上昇が加速し、Sell in Mayなど今年はないのだ、と皆が強気になった途端に大崩れとなりました。誰もがわかる相場など存在しないと思っています。出口が近いドルが一番強い、という解り易いシナリオ通りにはならないのではないか、という気がしています。例えば、自民大勝でさらに円安に拍車がかかるという見方の裏には、原発再稼働に向かうことで円高バイアスがかかるという見方も同時に存在するのです。(原発が止まってから、日本は海外からエネルギーを輸入していますが、これが震災後為替市場ではLNG為替とも呼ばれ円安要因にもなっています。)

また、フォワードガイダンス導入でユーロは長期的には売られる通貨、という見方も多い反面、「デフレ化する通貨は買われる」という見方も存在します。昨今、為替関係者の間では、ロイターに掲載されたみずほコーポレート銀行の唐鎌大輔氏のコラムが話題です。
ユーロ圏の実体経済は日米欧三極の中で明らかに最悪であるにもかかわらず、いったいなぜユーロは底堅さを保っていられるのだろうか。という「為替市場の不可思議」に切り込んだ仮説ですが、確かにユーロという通貨は1・20以下は底堅く、ギリシャのデフォルト危機でもパリティ(等価1ユーロ1ドル)を目指すことさえありませんでした。
この背景には、長期間デフレに苦しんだ日本の円と同じロジックで説明がつくのではないか、というものです。ユーロ圏生産者物価指数は断続的にマイナス圏に沈んでおり、経済の上流ではすでにデフレの兆候が見受けられています。物価情勢を踏まえると、ユーロ/ドルが「物価が下がる状況では通貨の購買力が高まる」という購買力平価説に則った動きをしても不思議ではなく、それはすなわちユーロの「円」化を意味するという見方になるほどと思った次第です。興味がある方は是非リンク先のロイターの唐鎌さんのコラムを読んでみてください。
最終的には「中銀に逆らうな」だと思いますが、問題はその政策のインパクトと市場への織り込み度合いです。中銀の発表した緩和政策を材料にひと通り売り込まれた後は、市場はさらなる燃料を求めるものです。そうした期待に応えられない場合、失望で買戻しに入る流れとなることもよくあることですし、別のシナリオで動き出すこともよくあること。

為替市場の変動要因は多岐に渡るため、今一体何が一番のメインシナリオなのかを見極めていくことが大切です。参院選通過後の今後、皆が円安株高と同じ方向のシナリオを唱え始めその方向に動いていけばいくほど、警戒を強めなければならないと思っています。大きく売られる局面がそう遠くない時点で訪れると思って慎重に見ているところです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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