第24回 北京の交通事情 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第24回 北京の交通事情 【北京駐在員事務所から】

北京の中心部では、毎日深刻な交通渋滞が発生しています。
自動車の排気ガスは、大気汚染の原因の一つとなっており、渋滞がさらに汚染物質の排出を増やしています。

北京市では、以下のような様々な施策を講じ、マイカー利用の抑制と、公共交通機関(地下鉄やバス)の利用増加を図っているのですが、なかなか効果が上がらず、渋滞は一向に解消されません。
(1) 市中心部への自家用車の乗入を規制(ナンバープレートの末尾番号により、月曜日から金曜日のうち1日が乗入禁止となります。)
(2) 新たな自動車登録の台数を抽選により制限
(3) 地下鉄路線網の拡充(市内のあちこちで新路線が建設中です。これが渋滞の原因にもなるのですが。)
(4) バス専用車線の設定と路線網の拡充
(5) 地下鉄、バス料金の政策的な安値設定(多額の補助金により安い料金を維持しています。)

このうち、(5)の地下鉄、バス料金は、地下鉄が全線一律2元(約32円)、バスは初乗り1元(約16円)に設定されています。
バス料金は、現金払いでなくICカードを利用する場合、6割引の初乗り0.4元(約6円)になります。

地下鉄を使えば、渋滞で時間を浪費することはないのですが、路線によっては朝夕のラッシュが酷く、輸送力の上限に達しているようです。
また、北京の地下鉄は乗換が非常に不便で、これも利用をためらわせる一因です。
線路が十字に交差している駅でも、乗換口はだいたいホームの端にあり、とんでもない大回りをさせられることがあります。
路線網の全体計画が無く、継ぎ足しの連続で建設がされたために、駅の構造が乗換を考慮したものになっていないように思われます。

バスも、たとえ専用車線があっても、交差点等で渋滞にはまると所要時間が読めません。
さらに、いかにも中国らしいのですが、要人の移動があると、長時間にわたり道路が封鎖され、全く身動きが取れなくなります。
日本でも、皇族の車列の移動等で信号調整が行われたりしますが、通常は数分間ですので、封鎖が数十分にも及ぶと本当に大変です。
渋滞に業を煮やしたバスの乗客が、大きな陸橋のど真ん中で下車し、延々と道路の橋を歩く光景も日常茶飯事です。

というわけで、「渋滞や混雑が避けられないのなら、マイカー通勤で音楽を聴いたり、携帯で話したりと自由に過ごしたい。」となり、自家用車の人気は一向に衰えません(中国では運転中も携帯電話の利用が可能です。)。
最近では、地下鉄やバスへの補助金(2012年は170億元、約2,700億円に達しました。)が過大との声が増えており、運賃の値上げが噂されています。
値上げの幅によっては、さらに自家用車利用へのシフトを呼びそうです。
私は地下鉄が嫌いで、バスを多く利用するのですが、「歩く方が早い」ことも多く、時間がかかることには慣れました。
それでも、待合せ等時間が決まっている時には地下鉄しかありません。
日本の公共交通機関が非常に便利に出来ていることを、改めて感じています。
北京の交通事情を巡る問題は、人口増、都市設計、さらには運転のマナー等人々の生活習慣にも根ざす非常に複雑なものです。
渋滞による経済損失や、大気汚染による健康への影響等、状況は深刻で改善が急務なのですが、毎日街の様子を見ていますと「打つ手なし」のようにも思えてしまいます。
今後、市当局がどのような対策を講じていくのか、期待せずに(?)見守りたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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