第25回 消費意欲は過去最高の水準に 【北京駐在員事務所から】

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第25回 消費意欲は過去最高の水準に 【北京駐在員事務所から】

米国のマーケティング調査会社ニールセンが、先週23日(火)に発表した4~6月の中国の消費者信頼感指数は110となり、昨年の4~6月に並び、調査開始以来の最高を記録しました。

消費者信頼感指数は、収入の見通しや消費意欲に関するアンケート調査を行い、結果を集計して算出するもので、100を上回ると消費者が先行きを楽観視し、消費に意欲を示しているとされます。

ニールセンは、世界の58ヵ国で、29,000人以上を対象に調査し、指数を発表しています。
中国の110は、全58ヵ国中5番目に高い水準だそうです。
ちなみに1位はインドネシアの124で、2位から4位はフィリピン、インド、タイとなっています。東南アジアで成長が続き、消費者が先行きを楽観視していることがうかがえます。
日本は78と低迷していますが、これでも2006年1~3月期の79に次ぎ、この7年間では最も高い水準です。
4~6月の世界全体の信頼感指数は94となり、1~3月の93からわずかに上昇しました。
欧州で、政府の財政危機、課税強化や失業率の上昇を背景に、指数の下落傾向が見られる一方、米国では雇用状況の改善に加え、住宅価格や株価の上昇による資産効果で、消費者心理が改善しているそうです。

中国では、足元では成長鈍化が顕著となり、雇用状況も悪化が懸念されていますが、賃金上昇により可処分所得が増加していることと、何よりも人々のよりよい生活への欲求が支えとなり、消費意欲は旺盛なものとなっています。
中国国家統計局によると、本年1~6月の都市部住民の平均可処分所得は13,649元(約22万円)で、前年同期比9.1%増となりました。
また農村部住民の可処分所得は4,171元(約67,000円)で、同13%増となりました。
水準は高いとは言えませんが、所得の着実な増加が、人々を消費に向かわせています。
都市部でも、多くの市民にとっては、電化製品や自動車等、「お金があれば欲しいものだらけ」です。
バブル期よりも前、高度成長期の日本に近い感じです。

ニールセンの調査によれば、中国の消費者の最大の関心は自身の収入と健康で、続いて子女の教育、社会福祉(年金制度の不備等)あるいは環境汚染の問題が挙げられています。
成長鈍化で消費への影響が懸念されるところですが、ニールセンの中国部門担当者は、消費者の生活水準向上の欲求は極めて強く、今後も消費は伸び続けると分析しています。

中国政府は、輸出と投資に依存した経済、産業構造を内需中心に転換するとの方針を打ち出しています。
消費が伸び続ければ、政府がもくろむ構造転換の成功につながりますが、一方で今後急速に進む高齢化で、就業人口の減少も予想されています。
収入の低い層、あるいは農村部の消費者の所得が伸びず、生活水準が向上しないままに、成長が止まってしまった場合、人々の不満が政府に向かい、社会の不安定要因になることも懸念されます。

「頑張ればよりよい生活が出来る」という希望を持てることが羨ましく思える一方、今後を見通すと課題山積と思われ、政府の舵取りは本当に難しいものになります。
特に、貧困層あるいは農村部の人々の生活水準が向上するかが問題です。この点に注目しつつ、今後の景気動向や人々の消費行動を観察してみたく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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