第8回 アナリストを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第8回 アナリストを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。先週は豪雨もあり、変な天候が続いています。みなさまの周りは大丈夫でしたでしょうか。被害に遭われた方には謹んでお見舞いを申し上げます。

さて、株式市場はまた荒れ模様となってきました。第一四半期決算が注目されていますが、大幅増益ながら、期待未達ということで売りを浴びる銘柄も多く散見されています。この「期待未達」というのは厄介なもので、このコラムの読者の中にも「その期待というのは一体なんなのだ?」といった印象を持たれる方も少なくないと思います。同様に、企業の経営陣とお話ししていても、「市場が勝手に期待して、勝手に失望し、株価がそれに振り回されている」と嘆く声をよくうかがいます。市場は見通せる未来をどんどん織り込んでいくものであり、それこそが市場の重要な役割であることは間違いないのですが、様々な思惑に市場(株価)が振り回されてしまうのは決して健全とは言い難いのも事実です。今後、どこかの時点で、「期待未達」の「期待」とは一体何なのか、それをどう測るのか、を解説してみたいと思います。

さて、「テーマを読み解く」とした本コラムですが、8回目となる今回は、その「アナリスト」を取り上げてみたいと思います。最近、あるネット企業が証券アナリストを名指しで批判し、会社訪問を禁止するというニュースリリースを発表するに至りました。業界ではかなり話題となり、一部では報道までされました。企業とアナリストで見解の相違が発生するのはよくあることですし、企業が「やんわりと」出入りを制限するというのも、実は決して珍しいことではありません。かくゆう筆者も過去に出入り禁止を食らった経験があります。アナリストは自分の意見を伝えるのが仕事であるため、企業サイドの見解とは異なる見方を市場に提示することは頻繁にあります。そこでやや感情的な行き違いが起きてしまうことがあるのです。

しかし、名指しをしてニュースリリースまで出すというのは異例中の異例と言えます。ここでの問題は企業が公式に個人攻撃をしたという点もあるのですが、より重要なのは企業が一つの市場の見方に対して「この見方は正しくなく、したがって会社としてはそれを認めない。そのアナリストも無視する」という見解を示したことにあります。そもそも、市場というのはいろいろな見方が混在するものです。世の中において「正しい見方」というのは、少なくともリアルタイムでは判別のしようがありません。ですから、売りと買いが同時に存在し、価格が形成されるのです。企業が一方的に正しいかどうかを判別などどうしてできるでしょう?(それが可能なのであれば、減益になったり、見通しを修正したりする必要はないはずです)

企業が「不愉快な」意見を封じ込めることになれば、正しい価格形成など求められるはずもなく、それはつまり市場の機能を否定することにもなります。市場参加者も、企業におもねった「よいしょ」の意見ばかりを要求する狭量な企業に投資したいと思うでしょうか。前段で触れた「市場の期待」というものも、面倒ではありますが、やはり市場の重要な役割であるのです。仮に「不愉快な」意見など聞きたくもないのであれば、やはり上場を止めるべきです。上場するということは、市場の意見に会社の価値を委ねるということでもあり、そこから真摯に市場の声を聞くということです。今回の事件は、そういったことへの理解が深いと思われていた新進のネット企業が発端となったことは、非常に残念としかいいようがありません。

この事件はまだ現在進行形です。アナリストは個人が名指しされているため、最終的にコトを収めるには企業側が振り上げた拳を下すしか手段はありません。このままずるずると事態を長引かせてしまうと、企業にとってもメリットはないと考えます。水面下では、企業側がその拳を下す段取りを考え始めていることと期待しています。市場関係者の一人として、企業も投資家もメリットを受けることができるような資本市場の確立と健全な発展を強く願っています。


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