第26回 中国人海外旅行者のマナー 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第26回 中国人海外旅行者のマナー 【北京駐在員事務所から】

経済成長で往来が活発化し、また所得が増えていることから、海外旅行に出かける中国人の数は近年大幅に増加しています。
国家観光局(日本の観光庁に相当)の統計では、中国人の海外旅行者数は、2007年からの6年間で倍増し、昨年2012年は8,320万人となりました。
日本人の出国者数が1,849万人ですから、約4.5倍です。
昨年秋からの日中関係悪化により、訪日観光客は減少しましたが、以前は東京の銀座や秋葉原で団体旅行のバスを数多く目にしました。
衣料品や電化製品の「爆買い」も有名です。

海外旅行客の急増にマナーが追い付かず、世界のあちこちでトラブル発生と言ったニュースも連日報じられており、中国のイメージの低下を懸念する声が多く聞かれます。
問題の広がりを受け、政府や共産党の機関が、相次いで対応に動いています。外交部(日本の外務省に相当)の高官は、「一部の海外旅行客の非文明的な振舞いは、現地の人々を困惑させ、中国のイメージを著しく悪化させている。」と警告しています。
ちなみに、様々な調査で、常に上位に挙げられるマナー違反は、
(1) 大声で騒ぐ
(2) ところかまわず痰を吐く
の二つだそうです。
加えて「列に並ばず割り込みをする」も良く聞かれます。

教育部(日本の文部科学省に相当)や商務部(日本の経済産業省に相当)も、観光旅行客への悪評が、中国人の留学生や出稼ぎ労働者にも悪影響をもたらす恐れがあるとして、マナーやエチケットを教育し、滞在先で不適切な振舞いを行わないよう徹底する必要があると述べています。

外交部は、旅行代理店に対し、「旅行出発前に、顧客に訪問先で守るべきルールや常識を十分に伝え、トラブルの予防に努めるよう求める。」としているのですが、これについては、「代理店が、お客様である旅行客にそのような教育ができる筈がない。」と、早くも実効性についての疑問の声が挙がっています。

「呼びかけ」だけでは改善は見込めないと判断した政府は、10月より、「旅行法」を施行し、この中で「中国の公民としての義務」として、公共の秩序と社会道徳を順守し、現地の生活習慣、文化、伝統と宗教を尊重することを定めています。
とは言え、法律に規定することで一気に状況が改善するほど容易なものではなく、今後時間をかけて旅行者が学習することでしか、問題の解決は出来ないものと思われます。

日本でも、昭和40年代から海外旅行が急速に普及し、初めの頃は「飛行機の中で酒盛り」等、ひんしゅくを買うような行動がいろいろあったそうです。
ただ、絶対数が少なく、現在の中国ほど目立つ存在とはなっていなかったと思われます。

中国人旅行客は、数も多く、また急激に増加しているため、軋轢も大きくなっています。
日本人と同じように、経験値を積むことで、マナーが向上し、世界で歓迎される上客となることを願いたく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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