第27回 いつ家を買うか? 今でしょ! 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第27回 いつ家を買うか? 今でしょ! 【北京駐在員事務所から】

株式市場の低迷とは対照的に、中国の住宅市場はほぼ一貫して上昇を続けています。
一次取得者(初めて住宅を購入する者)の実需に加え、安全確実な投資先としての評価もあり、旺盛な需要が物件価格の上昇を呼び、先高感から新たな需要が創出され、資金が流入するスパイラルとなっています。

男性の結婚の条件が「持ち家と車」と言われるくらいですから、一人っ子が多いとは言え、本当に大変です。
大都市では、価格上昇で一般市民には手の届かない水準に達しつつあり、不満が高まっています。
政府も、ここ数年、複数物件の所有の制限や売却時のキャピタルゲイン課税導入等、市場鎮静化のための対策を打ち出しています。
このうち、キャピタルゲイン課税については、本年3月に導入が発表され、不動産の売却益に20%の所得税を課し、売買を抑制しようとしたのですが、実際には課税分がそのまま取引価格に転嫁され、更なる価格の上昇を招く結果となりました。
しかも、この20%課税ですが、徴収が徹底されていないそうで、実際には多くが売主の懐に入っていると言われています。

このような取引規制強化策の導入が、特に中古物件の供給の減少を懸念する購入希望者の背中を押す形となり、本年上半期には取引が急増しました。
例えば上海市では、中古住宅の売買が通常一ヶ月で2万戸ほどあるのですが、本年3月には68,000戸が売買されました。
さすがに、需要には限りがあるということで、直近では取引が減少しています。調査機関の集計によると、先月7月の住宅販売(主要30都市で販売された新築住宅の総面積)は前年同月比で9.7%減と、1年半ぶりに減少となったそうです。
特に、南部の深圳市及び広州市(いずれも広東省)、あるいは上海市や北京市等の、最も価格が高い都市で取引が急減しています。

市場では、今後政府が更なる市場鎮静化のための対策を講じるか否かについて見方が分かれており、住宅購入予定者も様子見となっています。
もっとも、専門家の多くは、追加の対策は無いと見ており、また開発業者へのアンケート調査でも、物件価格の上昇を予想する声が多くなっています。
足元では、新規物件の建設も増えているそうで、再び市場の動きが活発化し、価格も上昇する可能性があります。住宅がますます「高嶺の花」になりそうで、市民の不満の種になることが懸念されます。

日本では、住宅購入の目安として「年収の5倍以内」と言われることがありますが、中国の都市部では「10倍程度」が普通だそうです。
親からの援助があり、また将来の収入増が期待できるため、倍率が高くなる訳ですが、それだけ大変な買い物であることが分かります。

住宅市場の活況と価格の上昇は、個人消費を喚起し、中国の経済成長に一定の貢献をしているのですが、限度を超えると日本のバブル崩壊の再来となりかねません。
政府のさまざまな対策も、意図した成果を挙げていないと言われ、この問題のコントロールが容易でないことを示しています。
多くの人々が、無理なく住宅を購入し、生活の充実を得られるよう、適切な舵取りを期待したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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