第9回 半沢直樹を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第9回 半沢直樹を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。早くもお盆が明け、子供達の夏休みもあと僅かになりました。社会人の方はこれから平常運転という方も多いのではないでしょうか。とんでもなく暑い日はまだまだ続いていますが、みなさま、体調にはお気をつけください。株式市場は夏枯れの如く、膠着感の強い展開となってきました。為替の動きもほぼ止まり、一時期待されていた105円や110円といったほどの円安水準はちょっと当面見込み難い状況にあります。株価も何度かの急落局面を経て、利食いを急ぐ雰囲気となっています。消費税導入の最終判断の行方も微妙な部分が出てきました。相場はしばらくボックス圏での推移になるのかもしれません。

さて、「テーマを読み解く」とした本コラムですが、9回目となる今回は、話題のあのTVドラマを取り上げてみたいと思います。「やられたらやり返す!倍返しだっ!」のあのドラマです。銀行を舞台に様々な理不尽に対して主人公がスジを通そうと奮闘するドラマですが、その主人公の決め台詞がこれです。長いモノに巻かれてしまうことの多い実社会において、苦難に挫けずスジを通そうとする主人公の姿に共感を覚える方も多いでしょう。筆者は証券畑の人間なので銀行とは文化も気風もかなり異なるのですが、金融のダイナミズムや企業の競争力の原点(この原作者はその例示としてよく「ネジ」を使っていますね!)の捉え方などは同じものを感じています。若干、銀行が伏魔殿のようなイメージとなってしまっているところはご愛嬌としておきましょう(笑)。

大ヒットとなったこのドラマをテーマにした株式投資となると、原作の出版社、TV番組の提供企業、放送局、広告代理店、といった銘柄群がまず頭に浮かんできます。あるいは、ややベタですが、一発逆転の「倍返し銘柄!」というアプローチでしょうか。しかし、これらはこのコラムで敢えて取り上げる必要はないでしょう。ここでは、もう少し大きな流れを考えてみたいと思います。そもそもこの一種の「活劇」に視聴者が快哉を挙げるのは、サラリーマン社会においても「やり返す!」というある意味攻撃的なスタンスを明言し、それを実行している点にあると思います。考えてみれば、グローバルスタンダードの名の下、日本の社会では有言実行、自己主張が久しく必要と言われてきました。しかし、現実には様々なしがらみがそれを阻み、依然として旧態依然の組織もまた残っているというのが実態です。「やられたら倍返し」と宣言する主人公への共感には、視聴者のその変化の遅さへのいらだちがあるのかもしれません。

これに対し、筆者の周りでは主人公に対して「こんな組織、とっとと辞めて何故転職しないのだろう?」という声が圧倒的です。優秀なのだから、倍返しするよりももっと大きなビジネスチャンスを指向すべきだろうという意見です。これは転職経験の有無が大きく影響しています。一旦会社の頸木から離れる時に、「辞めてせいせいした」という感情を持たれた方なら尚更でしょう。しかし、世の中一般はまだそれほど転職というのが一般的ではありません。厚生労働省の調査では、増えたとはいえ、転職率は年間まだ10%程度です。そういった観点からすれば、日本の労働市場はまだまだ澱みやすい状況にあると言えるのです(そして、それが内向きの発想に繋がるという悪循環もあります)。

このことは、人材流動化の余地が依然として大きいということになります。人材ビジネスは既にたくさんありますが、この転職率を見る限り、まだ世の中を変えるまでには至っていないのです。企業もこれまで以上に斬新な視点や発想が必要となってきていることは感じているはずです。「新しい血、新しい発想」への需要は大きいのです。もちろん、例えば20年前と比較すれば、全ての企業はそういった方向に着実に変化しています。しかし、その速度を緩やかであり、まだ手探りの段階が続いていると言わざるを得ません。将来、人材市場を一気に流動化させるビジネスモデルはきっと出てくると考えています。何故なら、それは企業も、労働者自身も、ともに大きなメリットがあるからです。これこそが大きな流れでみたこのテーマの関連業界である、と位置付けます。


http://lounge.monex.co.jp/advance/sector/

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧