第76回 消費税増税は日本株やドル/円相場にとってどんな影響を及ぼすの?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第76回 消費税増税は日本株やドル/円相場にとってどんな影響を及ぼすの?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

消費税が日本に初めて導入されたのは1989年4月。この頃は日本中が株高、土地高のバブルに浮かれていましたが、3%の消費税増税の翌年90年から株価が大暴落となりました。数年後は不動産価格も大暴落してバブル崩壊へと繋がっていきます。消費税がバブル崩壊を招いたわけではありませんが、この時の記憶が「消費税増税は景気悪化を招く」というイメージを鮮烈にしていると思われます。

また、97年4月には消費税が5%に引き上げられました。97年6月に2万円台にあった日経平均は、同年12月には1万4000円台に急落。その翌年10月には1万2000円台まで下落しています。

この事実だけを振り返り、消費税増税が景気や株価に大きなマイナス材料となるため消費税増税が決まれば日本株は売られる、という見方もあるようですがどうでしょうか。

しかし、89年の消費税増税がたまたまバブル崩壊(バブル崩壊の直接の要因は総量規制だと思われる)の前年であったこと、そして97年の時も消費税増税のタイミングは「アジア通貨危機」の直前でした。消費税増税がなくても株価は下落し、景気が落ち込んだことは想像に難くありません。たしかに消費税増税で購買意欲が抑制されたこともその後の景気低迷の一因ではありますが、それが故に日本経済が冷え込んだと指摘するのは正確ではないのです。

細かく株価とドル/円の動きを調べ直してみると、3%導入時の89年4月の31,000円台から日経平均は上昇を続けバブルの天井となる89年12月38,000円台まで8か月、7,000円も上昇しています。ドル/円相場は4月は132円台でしたが6月には150円近くにまで上昇しています。また、97年4月の日経平均は18,000円前後、アジア通貨危機が訪れる7月までの3か月間株価は上昇を続け20,000円前後にまで到達しています。ドル/円相場は導入の4月には125円台、これが7月に向けて円高となり110円台へと下落していくのですが、アジア通貨危機から転換しドル高へ。その後年末に向けては130円台まで上昇しました。これは通貨危機でドルが米国に還流するレパトリエーションであると思われます。

つまり、89年も97年も消費税導入が決まったらその瞬間から日本株売りになる、ということはなかったのです。別の要因が絡んで日本株は崩れていったのです。その後の景気に影響を及ぼし、不況を長引かせる要因であったとは思いますが。だから、増税が決まったら日本株を売る、ドル/円は下落する、と考えるのは安直すぎる戦略です。それだけを材料にして売買しない方が身のためです。

また、今回の場合、消費税増税が見送りになるほうが日本株にリスクだという指摘が大勢です。増税で日本株買い、ドル/円上昇という見方です。現在の日本株市場を動かしているのは外国人勢。アベノミクスで日本に投資した海外投資家は大きな利益を手にしました。そして彼らは夏休み明けの9月以降、アベノミクス第2幕をテーマに再び儲けようと期待しています。彼らの最大の関心は日本の景気の先行きではなく、アベノミクスの成功。これが目下トレードのテーマだからです。そのためには消費税増税が大前提の条件であるとの認識に立っているのです。消費税増税はIMFからの勧告もあり、実は増税見送りは許される状況ではありません。日本の景気後退を避けるために今回は見送るべきとの指摘も多いのですが、見送られた場合、海外のファンド勢は失望からこれまで投資してきた日本株市場、ドル/円市場からの撤退に動くと見られています。つまり、増税できない、という状況が目先の日本株とドル/円のマイナス材料なのです。1%ずつの刻みでの増税も論外。このような案で決着した場合も日本株売り、ドル/円売りとなると予想されているのです。

しかし、GDP速報値が予想外に悪かった...これが8月の日本株市場、ドル/円市場を不安定にさせてしまいました。9月のGDP改定値がいい数字に修正されるかどうかはふたを開けてみなければわかりませんが、予想より1%も下回っていた速報値を見る限り、あまり過大な期待はできません。このまま日本株が下落を続けると、GDPの数字も悪く、株価も冴えない中での消費税導入を安倍首相は決断しにくくなります。ということで、10月の決断のタイミングまでは株価はGPIFなどの年金マネーを使ってサポートされるのではないか、という見通しも出てきました。ドル/円市場にはすでにGPIFマネーが入ってきていると指摘されています。

ということで、今週から日本株、ドル/円は増税を決断する頃まで上昇していくのでは・・・?!9月は他にもオリンピック開催地決定やFOMCなどビッグイベント目白押しです。一筋縄ではいきませんが、8月にズルズルと下落したような地合いが9月も続く可能性は低くなっているように思います。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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