第29回 中国のペット事情 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第29回 中国のペット事情 【北京駐在員事務所から】

中国の伝統的なペット(家庭で飼育される動物)と言えば、昆虫や鑑賞魚が挙げられます。
金魚はごく一般的で、飲食店などでもよく目にします。また富裕層には日本の錦鯉が大人気で、自宅の庭に池を造り飼育するのがステータスとなっています。

最近では、経済成長で所得が増えた都市部の住民の間で、犬や猫の飼育がブームになっています。北京でも、朝の出勤時間帯には、犬を散歩させている人を多く見かけます。
以前は、ごく一部の富裕層が、希少で高価な品種を購入し飼育することで、成功のシンボルとなっていたのですが、近年は一般市民にも犬猫の飼育が広がっており、ペットフードや関連用品等を含め、市場が急拡大しているそうです。

中国では一人っ子政策が取られているため、子供の兄弟代わりとしてペットを育てる、あるいは進学や就職で子供が家を離れたことをきっかけに購入することも多いようです。

先週、上海市で開催されたペットフェアには、世界の32ヵ国から600社以上の出展があり、開催4日間で5万人を超える過去最高の入場者を記録しました。
来場者の注目を浴びたのは、時価10万元(約160万円)のベンガル種の猫、日本の錦鯉と馬でしたが、ペット専門の写真撮影サービス、ペットフード、専用の水、衣服、玩具、さらには葬儀サービスの業者も大人気だったそうです。
ちなみに、最も売れたものは1.5㎏袋で180元(約2,900円)の高級ドッグフードでした。
中国で販売される最高級の米(タイ産の香り米)が1㎏で60元(1,000円弱)だそうですので、これの2倍の価格です。

ペットが一般市民に普及したことで、最近ではペットの生活の質を高め、また長生きにつながるような用品、サービスへの関心が高まっています。
まさに「家族の一員」として愛玩されるようになっており、今後ますますの市場の成長が見込まれます。
新聞記事では、2歳のサモエド犬(シベリアン・スピッツ)を連れてペットフェアに来場した上海市在住の53歳の男性の話が紹介されていました。スコットランドからの輸入犬で26,000元(約42万円)で購入したそうです。
男性は、息子が大学進学で家を離れたことを機に購入し、「二人目の息子」として可愛がっているそうです。毎月3,000元(約5万円)を使っており、「自分は酒も飲まず、煙草も吸わない。また友人との付き合いに金を浪費することもなく、これといった趣味も無い。でもこの犬と一緒にいることが最高の楽しみで、つぎこむお金は少しも惜しくない。」と話していました。

中国の発展ぶりを象徴する話題ですが、1㎏2,000円近いドッグフードが売れる一方で、この夏の干ばつで、農村部では数百万の人々が飲み水にも窮しています。
日本でも、長引く不景気で貧富の差が広がっていると言われていますが、中国のそれは遥かに大きなものです。
都市部、沿岸部の発展の果実が、広く全国に行き渡ることが望まれますが、現実には豊かになった人々が更に豊かさを求める結果、格差が広がる一方となっています。
この「格差問題」、中国社会の将来の不安定要因になると言われて久しいのですが、状況の改善は見られません。
中国が抱える大きな問題として、今後も注視したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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