第30回 悪化の一途をたどる北京の交通渋滞 【北京駐在員事務所から】

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第30回 悪化の一途をたどる北京の交通渋滞 【北京駐在員事務所から】

中国の教育制度では、米国などと同様、9月が新入学及び進級の時期になります。学校の夏休み明けで往来が増え、また連休(中秋節及び10月初めの国慶節)を迎えることから、北京では9月の交通渋滞が一年で最も激しいと言われています。新学期と大型連休ということで、ちょうど日本の4月と同じような状況です。

渋滞による時間と燃料の浪費で発生する経済損失もさることながら、悪名高い北京の大気汚染は、その2割から3割程度が自動車の排気ガスによるとされており、暖房用の石炭燃焼でさらに汚染が激しくなる冬場を控え、市当局はさまざまな施策を講じ、渋滞の緩和を図ろうとしています。

最も手っ取り早い方策は「渋滞予想」の発表によるマイカー利用抑制です。中秋節(旧暦の8月15日で、今年は9月19日から21日の3連休です。)の前後の17日、18日及び22日、ならびに国慶節(10月1日、中国の建国記念日です。)前の29日は、特に激しい渋滞が予想されています。
市当局からは、この時期は大規模なイベントの開催を控えるよう、また企業等に時差出勤やフレックスタイムの導入等を行うようとの要請が出されています。

もっとも、北京のドライバーは渋滞に慣れっこになっていますので、この予想を見て、「朝早く家を出る」程度の対応はしても、「マイカー通勤をやめてバスや地下鉄にする」人はわずかなようです。

地下鉄やバスは混雑が激しいため不人気なのですが、何とかこちらに誘導しようということで、今月から新たに「定員制シャトルバス」の運行が始まりました。市中心部と郊外の住宅地の間を朝夕結ぶもので、東京で郊外向けに運行される「深夜バス」のように乗客全員が座れるのが売りです。
バス会社は、「空調とWiFi完備で快適」と宣伝しているのですが、沿線住民からは「料金が高い」と評判は今一つのようで、渋滞の緩和につなげられるかどうかは未知数です。

さらに抜本的な対策として考えられているのが、市中心部への車の乗入制限の強化あるいは課金(ロードプライシング)です。
現在は、ナンバープレートの末尾の数字に基づき、自家用車は平日(月曜日から金曜日)のうち1日が乗入禁止なのですが、これをさらに強化し、最も渋滞の激しい地域では朝夕のラッシュ時間帯のマイカー乗入を全面禁止にする等の案が検討されています。
また、ロードプライシングは、シンガポールなどに例がありますが、日本のETCのような課金システムを利用し、市中心部に乗り入れる車から通行料金を徴収するものです。
これらは通行量を減らすためには有効と思われますが、当然ながらドライバーの評判は悪く、「まずは政府機関等の公用車を率先して削減すべき」あるいは「自動車を購入した途端に利用を制限するのは不当で、せめて十分な周知期間の確保あるいは段階的な実施を望む」等の声が聞かれています。

この手の議論は、どうしても「総論賛成、各論反対」になりがちなのですが、至るところで「歩いた方が早く到着する」現在の状況は放置できません。
昨年末から今年の初めにかけ、日本でも大きく報道されました「PM2.5」に象徴される大気汚染は、おそらくこの冬も大きな改善は望めないでしょう。再び深刻な汚染を目の当たりにした政府及び市民が、交通渋滞の緩和、解消に向けて一致団結して動き出せるかどうか、大きな期待は出来ませんが注目したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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