第78回 米国債金利とドル/円相場の相関 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第78回 米国債金利とドル/円相場の相関 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週、米雇用統計発表前の6日に米国の10年債利回りが3.005%と、2011年7月以来で初めて3%台に乗せたことで、ドル/円相場も1ドル100円の大台を突破する上昇を見せました。米国債利回りが上昇し日本国債の利回りがあまり上がらない状態にある場合、日米の金利差が拡大します。これはドル/円の上昇要因のひとつでもあります。預金する時、少しでも金利が高い銀行にお金を預けようというのが投資家の心理ですよね。日本より米国の方が金利が高いなら、円よりドルのほうが志向されるというわけです。為替の変動要因は多岐に渡るため、必ずしも日米の金利差だけで動いているわけではありませんが、米国債金利の上昇が急ピッチであるため、警戒する声も大きくなってきています。

米国債10年物金利は今年5月30日には1.6085%まで下落していましたが、米国のテーパリング(金融緩和縮小観測)が出てきてから上昇に転じており、9月6日には3%の大台にまで上昇してきました。金利が上昇するということは債券相場(価格)は下落しています。債券が売られ人気がなくなるため金利が上がるのです。逆に債券が売られすぎて金利が上昇してくると、金利収入の魅力が増すため、また債券市場に資金が流れ込みます。すると今度は金利が下がるのです。テーパリング観測が高まってくるに連れて、FRBがこれまで買いいれていた米国債の金額が縮小されるとの思惑から、先に債券を手放そうとする動きが加速しているために、金利が上昇しているのだと見られています。

通常、金利が上がるというのは景気回復の証だとして懸念されることではありません。(程度によりますが)例えば米国で景気が回復していると仮定します。景気が回復してくれば企業は設備投資を増やし、事業を拡大します。すると資金需要が増加します。資金を借りる企業が増えるため金利は上昇していきます。米金利が上がってくれば、米国通貨であるドルも買われます。また、安全資産とされる債券ではなく、株などの他のリスク商品に投資する動きも活発になって来ます。債券が売られて株が買われる。これはグレートローテーションと呼ばれ、景気回復時の現象として今年前半にも囃された言葉ですね。

しかし、景気が良くなったとして債券から株へ資金が移動しているという兆候がこのところ見られません。米国株もまたテーパリングを意識して売られており調整相場に入っています。債券も株も売られているというのが最近の米国市場。それほどにテーパリングと呼ばれる量的緩和策の縮小はマーケット関係者の不安要因だということなのでしょう。

昨今の金利の上昇は住宅ローンの上昇に繋がり住宅販売に陰りを見せ始めています。景気が良くて自然に金利が上がっていく分には何の問題もないのですが、景気回復が盤石でないのに金利だけが上がっていってしまえば資金需要も喚起されず、景気回復の腰を折ってしまいます。米国債10年物金利が3%台に乗せたことも、そのスピードが速すぎることが懸念材料となっているのです。

もし、金利上昇が止まらず上がり続けていくようなら米国景気の先行きが不安視され、ますます株が売られてしまいます。日米金利差拡大からドル/円は上昇するだろう、という見方も間違いではないのですが、リスクを回避しようとする動きが加速する事態に繋がれば、金利差を無視して米株売りに連動して日本株が売られ、結果ドル/円相場も円買いに動いてしまうという動きとなることがあるかもしれません。つまり、金利差拡大は必ずしもドル/円相場にとって強い支援材料になるというわけではないのです。

債務問題に苦しむ欧州や新興国の中には、金利が10%前後という国もたくさんありますが、こうした高金利国は財政状況に不安があったり、政治的に不安定であったりすることから海外から資金が流れてこないために、金利を高くしないとならないのが実情です。高金利通貨国というのはリスクが高いということでもあります。米国がリスクだとは言いませんが、急激な金利の上昇が不気味であるのは事実。米国債が急激に売られて金利が急上昇する局面があれば、それはリスクオフ相場。その時は必ずしも教科書通りにドル/円上昇となるわけではないということを覚えておきましょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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