第79回 何故サマーズ氏FRB議長候補辞退で相場が動いたのか  【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第79回 何故サマーズ氏FRB議長候補辞退で相場が動いたのか  【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

「サマーズ氏がFRB議長候補辞退」「シリア化学兵器廃棄で米ロ合意~武力行使は当面回避へ」3連休中、マーケットを動かす大きなニュースが2つ飛び出しました。シリアへの軍事攻撃が当面回避されたことでマーケットがリスクテイクに動くであろうことは容易に想像がつくのですが、「サマーズ氏FRB議長候補辞退」も同じく、リスクテイクに動く材料として受け止められました。これらのニュースを受けて週明け月曜日の米国株ダウ平均は100ドル超の上昇でスタート、最高値15600ドル近辺に迫るところまで上昇となってきています。またドル/円相場は月曜早朝、窓を開けて下落し円高進行となりました。何故ブックメーカーでは最有力候補とされていたサマーズ氏の議長就任がなくなったことで株が上がり、ドルが下がるのでしょうか。

ローレンス・サマーズ元財務長官は28歳と史上最年少でハーバード大学の教授に、クリントン政権では財務次官、財務副長官を経て1995年に財務長官に就任しました。クリントン政権終了後はハーバード大学学長に就任したのですが2006年に女性蔑視発言などで学長を辞任しています。こうした失言癖があることがマーケットではリスクとも捉えられていたようです。財務長官、副長官時代の人の意見を聞かない、人を見下すなどの傲岸な態度で米議会では評判が悪く、オバマ氏が指名しても議会がこれを否決するだろう、との見方も強くありました。

また、サマーズ氏は量的緩和策として知られるFRBの大規模な債券買い入れプログラムの有効性にも懐疑的な立場を取っています。カリフォルニアの4月の会合で「新興国市場に小さなバブルの兆しがみられる」と示唆、「多くの人が考えるよりも引き締め局面の開始が予想より早く到来すると思わせる方向で政策運営すべきだ」と述べており、こうした発言が、サマーズ氏が就任となればテーパリングの規模や速度が高まることが予想されることから、マーケットが一時的に大きく崩れる可能性を警戒していました。先週13日の金曜日にはオバマ大統領がサマーズ氏指名で最終調整に入ったとの報道もあり、株式市場では利食いが旺盛となりバラマキの量が縮小していくという観測から為替市場ではドル買いが強まっていたのです。

マーケットでこうした織り込みが進んだ矢先の「辞退」報道で、この織り込み(株売り、ドル買い)が一気に巻き返されての株高、ドル安というのが今週週明けの動きとなったのです。

では、サマーズ氏が候補から消えた今、後任には誰が有力視されているのでしょうか。
まずは女性初のFRB議長なるか?!もともと有力視されていたジャネット・イエレン現副議長。2010年10月4日からFRB副議長を務めており、金融政策に関する知識、実務能力ともにマーケットの信頼が非常に厚い人物です。しかし、最終的には議会の承認が必要とはいえ、指名するのはオバマ大統領。8月にオバマ氏はイエレン氏のことを「Mr.イエレン」と呼ぶ失敗をしています。指名するつもりのある人物の性別を間違えることがあるでしょうか?ジャネット・イエレン氏は女性です!ブックメーカーでは現在1位に浮上してきてはいるようですが。イエレン氏有力であれば株高ドル高傾向が強まるでしょう。

その他にもデービッド・コーン前FRB副議長や、ロジャー・ファーガソン元FRB副議長、ガイトナー前財務長官などの名前が挙がっています。コーン氏はFRBの在籍期間は40年にも及びグリーンスパン前議長の時代から副議長としてFRBを支えたベテランで、穏健なハト派として知られています。彼が有力となればドル高、株高でしょうか。

ファーガソン氏はFRB時代は非常に優秀な政策責任者として評判も高い人物で仮に就任となれば、初のアフリカ系議長誕生となります。ただしどちらかというと金融政策ではなくて銀行関係の専門家という見方が強く金融政策の指揮について未知数との見方。市場も彼が優位となると、判断に迷うことからボラティリティが上がるとの指摘があります。

そしてガイトナー前財務長官の名前も早くから挙がっていました。第一期のオバマ政権下で財務長官を務めていることや財務長官に就任する前はFRBにおける金融政策の実行部隊でもあるNY連銀の総裁を務めるなど、金融政策面でのキャリアにも評価が高い実力派ですが、本人が拒否しているとのうわさもあり、現実的ではなさそうです。

いずれにしろ今秋にもオバマ大統領は次のFRB議長を指名することとなっており、このニュースは市場を大きく動かす要因のひとつとなるでしょう。サマーズ辞退で、大波乱リスクはなくなったとは思うのですが...。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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