第33回 「ぜいたく禁止令」の強化 【北京駐在員事務所から】

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第33回 「ぜいたく禁止令」の強化 【北京駐在員事務所から】

昨年11月に開催された中国共産党第18回全国代表大会(十八大)で、習近平氏が党総書記に就任し、同氏は新指導部の初仕事として、党及び政府高官の綱紀粛正と汚職摘発を打ち出しました。22日(日)に無期懲役の判決を受けた薄熙来氏の事件も、この指導部の姿勢を象徴するものと言えます(共産党内部での「政争」とも言われていますが。)。

共産党大会後に、公費の濫用や官官接待などを厳しく禁じる「ぜいたく禁止令」が施行され、高級酒、食品やレストランの売上が急減したことが話題となりましたが、実際には様々な「抜け道」があり、今も浪費は続いているとの噂が絶えません。

一段の厳格化が必要と判断した政府は、23日(月)に、公費による会議等に関する新たな規則を発表しました。来年1月1日より施行されます。対象は共産党及び中央政府の各機関、ならびに政府の管轄下にある公的機関で、これらが主催する会議等について、詳細なルールが定められています。新聞記事には、以下のような内容が紹介されていました。

(1) 会議等への支出は年間予算の範囲内とし、超過は認めない。

(2) 各会議への支出内容を詳細に記録し保管する。

(3) 費用の支払方法は銀行振込または公用のクレジットカードに限り、現金は認めない。

(4) 参加者が50名未満の会議は、各機関の施設で行うこととし、ホテル等の利用は認めない。

(5) 5つ星(最高級)ホテルの利用は、共産党中央委員会あるいは政府国務院(日本の内閣府に相当)が主催するものを除き禁止する。

(6) 主催者が、会議の出席者あるいは組織の下部機関に費用負担を求めることを禁止する。

(7) 主要な出席者が北京市内在住の場合には、市外の会場で会議を行うことを禁止する。

(8) 会議で提供する食事には、高価な食材や酒を用いないこととし、装飾や卓上の花は禁止する。

(9) 参加者への観光や土産物の提供を禁止する。

上記のように、まるで箸の上げ下ろしまでという感じで規則化しています。これほどまでに細かく定めておかないと「やりたい放題」になってしまうという訳です。

加えて、情報開示についても、政府の機密情報に触れる場合を除き、主催者は会議の名称、議題、参加者名及び費用について公表する必要があるとしています。さらには会議の規模(参加者数及び期間)も、例えば期間については、共産党中央委員会あるいは政府国務院が主催するものを除き、2日間を上限とするよう求めています。

専門家は、この新たな規則について、「これまでの抜け道だらけの内容から、実効性を伴うものに改められており、公費濫用の撲滅のため、共産党及び政府が並々ならぬ決意を示したものとして評価できる。」としています。対象が政府関係機関まで拡大され、また規模の小さい会議についてもルールが定められたことで、綱紀粛正の徹底が図られることが期待されています。とは言え、公費濫用の是正と綱紀粛正については、これまでも度々対策が講じられて来たにもかかわらず、一向に改善されていないという経緯があります。「今度こそは」との期待を裏切ることとならぬよう、組織の末端までの意識改革が求められます。

日本でも、以前は「官官接待」等が問題視されましたが、中国のそれは桁違いです。政府のかなりの高官でも、公表されている報酬(年収)は数百万円程度ですが、「一族で不動産物件を多数保有」といった話は枚挙に暇がなく、また子女の海外留学も「当たり前」という感じです。不動産購入に関する便宜を初め、党及び政府の役職員には様々な特権があり、これの価値が膨大と言われています。そのため、人気も高く、公務員試験の競争の激烈さは、大学入試のそれにも劣らないものとなっています。

都市部と農村部、あるいは沿岸部と内陸部の経済格差も中国の深刻な問題ですが、この「官民格差」も放置できません。習近平体制の下、解消に向かうよう、過大な期待はできませんが、注目して見守りたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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