第34回 欧州で存在感を高める中国系企業 【北京駐在員事務所から】

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第34回 欧州で存在感を高める中国系企業 【北京駐在員事務所から】

2009年10月のギリシャの政権交代に端を発した欧州債務危機は、スペイン、アイルランド等に波及し、欧州の景気低迷の長期化をもたらしています。

このような中、欧州に進出する中国企業が増加しています。
ベルギーのアントワープ大学経営大学院が、中国企業の欧州への進出状況について調査を行い、積極的な投資で存在感を高めており、雇用の創出などで貢献しているというレポートを発表しました。

2011年末から、2013年1月までの13ヶ月間で、欧州の中国系企業は以下のように規模を拡大しています。

社数:4,525社⇒7,148社(57.9%増)

従業員数:27,381名⇒123,780名(4.5倍)

総資産額:204億米ドル(約2兆円)⇒1,184億米ドル(約11.8兆円)

営業収益:113億米ドル(約1.1兆円)⇒650億米ドル(約6.5兆円)

社数以上に他の指標の伸びが大きく、中国系企業の成長ぶりがうかがえます。
アントワープ大学の研究者は、調査に用いた欧州企業1,900万社のデータベースは不完全なもので、中国系企業の進出規模は、恐らく今回の集計結果を上回っているはずと述べています。

2013年に入り、中国は欧州への投資額で、米国、日本に次ぐ第3位になりました。双方向の投資規模を比較すると、一貫して中国から欧州諸国への投資額よりも、欧州から中国への投資額の方が上回っていますが、その差は縮小しています。
一部の調査機関は、2017年には中国が欧州への純投資国(投資額が投資受入額を上回る。)になると予想しています。

順調に成長しているように見える欧州の中国系企業ですが、黒字企業の割合は半分程度で、中国に進出した欧州系企業の8割が利益を上げているのに比べ、苦戦しています。欧州の経済状況が依然振るわず、ビジネスの環境が厳しいことが理由として挙げられています。

今後は、ハイテク分野やサービス産業での、中国企業によるM&Aが進むと見られていますが、一部の国からは、急速に高まる中国のプレゼンスに対する警戒感も示されており、このまま一本調子で、とは行かないかもしれません。
とは言え、中国からの投資は、欧州経済の立て直しに寄与するとの肯定的な見方も多くあり、農産物やブランド品等の輸出先としての期待とあわせ、今後も中国に対しては熱い視線が注がれるものと思われます。

中国では、「行きたい旅行先」として欧州の人気が高く、またブランド品の人気も絶大です。
ちょうど高度成長期からバブル期に、日本人が欧州に憧れ、旅行者が大挙してブランド品を購入していた頃にそっくりです。
日本企業も、中国の勢いに飲まれることなく、独自の地位を築き、プレゼンスを維持できるよう、工夫と努力が求められるところです。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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