第36回 中国の物価 【北京駐在員事務所から】

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第36回 中国の物価 【北京駐在員事務所から】

中国国家統計局が14日(月)に発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比3.1%上昇し、2月の3.2%上昇以来7ヶ月ぶりの上昇幅となりました。
アナリストの予想平均は2.8%でしたので、事前の予想を上回りました。
品目別では、指数のおよそ3割を構成する食料品が6.1%上昇し、全体の数字を押し上げました。
夏の干ばつの影響で生鮮野菜が大幅に値上がりしたことと、連休(中秋節及び国慶節)前の需要増が上昇の要因と見られています。
食料品以外では、衣料品が2.3%、教育・娯楽が1.9%、家電製品が1.4%それぞれ上昇などとなっています。

第3四半期(7~9月)の上昇率は2.8%となり、第1、第2四半期の2.4%から上昇しました。
2013年通年での上昇率は2.7%程度と予想されています。

政府は、CPI上昇率について、「3.5%以下に抑制する」との方針を示しており、現状はこの範囲内に収まっていることから、専門家は今後の金融政策、あるいは習近平政権が進める経済構造の改革の方針が変更されることは無いと予想しています。
成長の鈍化傾向が鮮明となる中、内需を喚起し、一方で競争力維持のため賃金上昇とインフレは抑制したい政府の舵取りは、ますます難しいものとなっています。

私はほとんど自炊をしませんため、肉、魚や野菜などの生鮮食品の価格上昇を実感することはないのですが、牛乳などは確かに昨年よりも高くなっています。
また、日本と比べた価格水準も、外国人が多く利用する高級スーパーや、イトーヨーカ堂、イオン等の日系スーパーで見る限り、決して安いとは言えないように思います。
一般市民は、スーパーマーケットよりも市場のようなところで購入しているようで、おそらくそのようなところではかなり安く入手できるのでしょう。

日本よりも人件費が安いので、サービス価格(外食や公共交通機関など)は割安に感じられます。
一般的な食堂の値段は日本の3分の1程度で、地下鉄は一律2元(32円)、タクシーの初乗りは13元(210円)です。
中国の賃金水準を考えれば、これで日本と同程度の負担感かと思われます。
食料品の値上がりは市民の生活を直撃する重大問題ですが、都市部の住民にとってさらに頭の痛い問題は住宅価格の上昇です。
政府は上昇抑制のため、さまざまな施策を講じているのですが、なかなか成果が挙がらず、需要はますます過熱しているようです。
影響は賃貸住宅にも及び、家賃の上昇に苦しむ庶民も多いと報じられています。
日本で長く続いたデフレも問題ですが、中国の現状は日本のバブル期(不動産価格の上昇)とバブル崩壊後(成長鈍化)が混在し、非常に複雑です。
都市部と農村部、あるいは沿岸部と内陸部の発展度合いや生活水準の差が大きいことも、政策運営を難しいものにしています。

日本や欧米諸国の過去の経験が当てはまらない点も多く、成長と社会の安定化は「壮大な実験」のようにも思われます。
中国がどのような道を歩んでいくのか、期待半分、不安半分で見て行きたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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