第13回 ノーベル賞を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第13回 ノーベル賞を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場はなかなかすっきりしない展開となっています。オリンピック、消費税などのイベントはほぼ一巡したものの、海外動向も含めてなかなか一筋縄では行かない状況にあります。かなりじれったい流れではありますが、「休むも相場」です。じっくり考える好機と見て、大きく構えていきましょう。なお、繰り返しになりますが、上場株式の譲渡益課税で10%の税率が適応される期間は本年12月までです。お手持ちの株式で含み益が出ている場合は利食いのタイミングに気をつけて下さい。

さて、「テーマを読み解く」とした本コラムですが、13回目となる今回は、ノーベル賞を取り上げてみましょう。先々週に2013年の受賞者は既に発表されましたが、残念ながら今回日本人が選ばれることはありませんでした。しかし、昨年の山中教授の受賞を契機にバイオ株が大きく動意づいたのは記憶に新しいところです。バイオ株はこのコラム(第4回)でもかつて取り上げたことがありますが、この時はその後に政府関連予算の積み増しも検討され、商業実用化についても一気に実現性への期待が高まりました。これらが追い風となって、バイオ株は息の長いテーマとなりました。同様に、今回もノーベル賞発表前から関連が目される銘柄では幾つか値を飛ばす展開がありました。昨年のバイオ株の再現期待がそれらの原動力になったのだと思われます。

ですが、冷静になって考えてみましょう。そもそもノーベル賞というのは、「顕著な功績を残した人物」に与えられるものであり、その多くは「既に発見・発明され、それによる功績も長期間において確立されている」ケースになります。つまり、受賞する研究というのは、とっくに旬の時期を越えており、(功績が確認できるということは)実用化も十分に進んでいるとも言えるのです。ちょっと違う視点とはなりますが、近年にその存在が確認されたことで、発表から半世紀後に物理学賞を取ったヒッグス博士のヒッグス粒子はその好例かもしれません。ヒッグス粒子は既に物理学界では常識であり、それを前提に様々な理論が展開されてもいるからです。ノーベル賞を受賞する時点ではその評価も既に固まっていて、それによってファンダメンタルズが新たに劇的に大きく変化するようなケースはまずないのが現実なのです。昨年の山中教授の例はむしろ異例のスピード受賞であったと言えます。それだけ教授の研究は出色と言えるのですが、如何に世界最高峰のノーベル賞とはいえ、そこまで短期間で功績が認められる偉業がどんどん出てくるというのは期待が過ぎます。換言すれば、ノーベル賞で銘柄が動くというのは、かなり強引な理由づけとなってしまう傾向が否めません。

もちろん、サプライズがあれば、当然株式市場も敏感に反応することは間違いありません。研究から受賞が短期間であれば、実体経済への応用余地もまだまだ広がり途上であるうえ、「お墨付き」によってそれがさらに加速する効果も期待できます。山中教授の例も、下馬評に上ってはいたものの、スピード受賞はやはりサプライズであったことがその後の相場に繋がりました。2002年の化学賞を受賞した田中博士(当時はまだ博士号をお持ちでなかったようです)の場合のように一介のサラリーマンの受賞ともなれば、勤務されていた島津製作所への評価はもちろん、多くの市井の技術が再度見直されるきっかけにもなりました。ただし、こういった例は予想できないからこそサプライズなのであり、事前に注目されることは皆無と言ってよいでしょう。日本人として、日本人によるノーベル賞受賞には快哉を上げますが、それをネタとする株式投資はかなり割り切って臨む姿勢が重要だと位置づけます。

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