第84回 金市場の動向を追え?!小さいマーケットが先行指標に 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第84回 金市場の動向を追え?!小さいマーケットが先行指標に 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

米国のデフォルトの危機は17日土壇場で回避されました。テクニカルデフォルトの可能性を示唆する報道もあって神経質な値動きとなることもありましたが、振り返ってみるとダウ平均は9日から、日経平均は8日から上昇に転じており、株式市場は米国の政治ショーは波乱なく決着することを予見していたようです。あれだけ騒がれた割には波乱なく通過した印象ですが面白いのが金市場。デフォルト回避の報道を受けて、急伸したのです。

これまで金はマーケットのリスクが高まった時に資金の逃避先となると理解されてきました。リーマンショックの後にいち早く上昇を開始し、大きなトレンドを形成、シリアへの軍事介入が警戒された時も金が買われました。しかし、今回は米国のデフォルトの危機だというのに、17日のデッドラインに向けて金の下落が続いていたのです。これは何を意味しているのでしょうか。

金市場はどの市場よりも先行してマーケットの大局を指南するように感じています。リーマンショック後に金がいち早く立ち直ったのは、米国経済の先行きに対する懸念の裏返しといえばそれも間違いではないのですが、米国が非伝統的な量的緩和策を取ることで金余りのマーケットとなることを見越していたのでしょう。同様に、昨年秋から続く下落トレンドの理由は、米国がいよいよ出口戦略を取る時期が近付いているだろうことをいち早く織り込み始めたとも考えられます。量的緩和縮小がスタートすることですぐに米国の金利が引き上げられるわけではないのですが、金融政策の正常化の第1歩は将来の金利上昇を織り込み始めるのです。貴金属業界では著名なGFMS元CEOのポール・ウォーカー氏が先般来日し私の担当するラジオにもご出演くださったのですが、実質金利が全てを決めると言っても過言ではないとし、2014年前半には1000ドルを割れると指摘。リーマンショック以降、先進国はほぼゼロ金利時代に突入したことが金が選ばれ続けた大きな要因であったとし、この先米国が量的緩和縮小に動き正常化に向かうことで金利のつかない金に資金が戻ることはないと断言したのです。

金利だけがマーケットの全てを支配するという考え方は多少乱暴だとは思いますが、しかし、デフォルトの危機と騒がれたにもかかわらず金が揺るぐことなく下落を続けたことを考えると、やはり何か大きな変化が起こっていると考えたほうがよさそうです。金のマーケットは債券や株式、為替市場と比較してもとても小さいため、資金の流出入が顕著に値動きに表れます。マクロマーケットの先行指標になり得ると考えてウォッチしていくことをお勧めします。

では何故デフォルト回避のニュースで金が上昇したのでしょうか。
某米系大手金融機関から大口の買いが入ったためという一部報道もありますが、単純に「ドル安」となったためと見ていいでしょう。

実は17日に向けて財務省短期証券(TB)入札が不調となり落札利回りがリーマンショック以来の高水準となっていたのです。デフォルトを懸念して短期国債利回りが上昇したことで、ドル買いが起こっていたということ。あるいは、万が一にもデフォルトとなった時のためにドルキャッシュを手元に置いておこうという動きが事前に出ていたことでドル買いが起こり、17日に向けてドル高となっていたのです。ドル/円相場も98.98円まで上昇、ユーロ/ドル相場も1.3471ドルまで下落していました。

ところが、デフォルト回避でTB利回りが落ち着いたことで一転してドル売りとなったのです。あるいはデフォルト回避により、次のテーマに焦点がシフトしたとも考えられます。政府機関閉鎖の影響で経済指標が悪化しているのではないか・・・。テーパリング(量的緩和縮小)開始が後ずれするとの観測が高まり10年物利回りも低下しました。日米金利差縮小でドル安です。これにより金市場で大口の買いが出た、あるいはショートカバーが起こったとみていいでしょう。今回のケースでもやはり金利動向が為替市場を動かし、金市場を動かしています。金利動向が最も重要であるとしたポール・ウォーカー氏の指摘した通りです。

この先は、今夜発表される9月分の雇用統計を始め、続々と出てくる経済指標によるテーパリング開始時期観測が市場を動かしていくものと思われます。良い指標が出ればテーパリング年内開始の思惑の高まりで金利が上昇、ドルが買われ、金が売られるという値動きとなることが予想されます。このところは短期筋の仕掛けによる大口の売買が金市場のボラティリティを上げてしまっていますが、金価格が1,178ドルで大底を打って上昇過程にあるとみるか(それにしても2番底を取りに行く値動きに見えますが)、まだまだ底は見えず、金の上昇のサイクルが終わったとみるかで、証券市場、為替市場のこれからが見えてくると思います。金が大きく戻り上昇を始めたら、早期テーパリングの可能性は著しく低下したということです。この場合、皆が描いている100円超えのドル高シナリオも大分後になることでしょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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