第37回 中国の大学入試 【北京駐在員事務所から】

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第37回 中国の大学入試 【北京駐在員事務所から】

中国の大学入試は、日本のような学校ごとの試験ではなく、日本の大学入試センター試験のような「全国大学統一入試」(通称「高考」)により行われます。
中国では米国などと同様、9月新入学のため、高考は毎年6月に行われます。
高考は、北京市、上海市など一部の市や省では、独自の問題により行われ、その他の省、自治区などでは共通の問題により行われます。このため、「全国統一」といっても試験の内容は一律ではありません。

中国の大学入試で特徴的な点は、各大学が受験生の居住する市や省ごとに入学定員を設けていることです。
例えば北京市の有名大学である北京大学あるいは清華大学では、地元北京市在住者の入学枠が大きいと言われ、地方在住の受験生よりも入学が容易とされています。それでも、志望者が多いため、「極めて狭き門」であることに変わりは無いのですが。
このため、地方から北京、上海などの有名大学に進学する学生は、皆極めて優秀な「天才」や「神童」揃いということになります。
一律の競争とせず、このような方法を採用していることの理由は、都市部への人口流入の抑制等いろいろあるそうですが、当然ながら「不公平」との批判もあります。

北京市の教育委員会は、21日(月)に、同市が実施する高考について、英語の配点を減らし、逆に国語を増やす改革案を発表しました。2016年の試験から変更する計画としています。
高考全体の中で、英語の割合が高く、受験生の負担となっていることと、学生の国語能力を高めることが変更の理由、目的とされています。
また、山東省(北京市の南、青島市などがあります。)では、英語のリスニング試験を廃止する案が検討されているそうです。

これらの改革案を巡り、受験生、父母や教師などの間で賛否両論が飛び交っています。
「受験生は英語の勉強に時間と労力を取られすぎており、学生の中には英語あるいは海外への関心が高くない者もいる以上、国語により重きを置くべきである。」と言った意見がある一方、「国語の配点を高めたところで、受験生は高考でより高い得点を獲得するためのテクニックの習得に力を入れてしまい、本当の国語能力を高めることにはつながらない。」との声も聞かれます。

受験生からは、負担が軽減されると歓迎する声がある一方、英語が得意な、あるいは英語への関心が高い生徒は落胆していると報じられています。
また、特徴的なのは高校の英語教師の意見で、この改革により、全体的には英語の負担を減らしつつ、現在の読み書きへの偏重から会話等バランスの取れた学習内容に改め、より充実した指導を行うことができると概ね歓迎されています。
それだけ、現在の英語の勉強が大変ということなのでしょう。

大学入試の厳しさと言えば、韓国のそれが有名ですが、中国も人口が多く、かつ高考での「一発勝負」ですので、受験生にとってはその後の人生をも左右する一大イベントです。一人っ子政策により、両親や祖父母の期待を一身に受けることになりますので、プレッシャーも大きく、毎年高考が終わると体調を崩す受験生が多くいるそうです。

日本でもセンター試験の廃止が検討されているように、教育制度、入試制度は正解がないものですので、時代の変化に対応し修正していく柔軟性が必要です。
もちろん、学生、生徒の負担と公平性への配慮も重要です。

中国の大学入試制度が、受験生にとり望ましいものとなり、優秀な学生が大学でも勉強に励み、将来社会に貢献されるよう望みたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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