第85回 中国リスクは本当か?!日本株下落、円高の本当の原因を探れ 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第85回 中国リスクは本当か?!日本株下落、円高の本当の原因を探れ 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週(21~25日)の世界の株式市場で主要20カ国中、日経平均株価の下落率が3%と最大となりました。報道では中国の金融引き締め観測が広がり中国景気の先行きに不透明感が強まったことで上海総合指数が下落、リスク回避で円高が進行したことで日本株も売られたと解説されています。ドル/円相場は1ドル96円台にまで下落し、市場が意識している200日移動平均線を一時割り込むところまで円高進行となりました。この円高が日本株の下落の背景にあることには違いないと思いますが、果たして、中国の金融引き締め観測というのが真相と言うのは本当でしょうか。

中国人民銀行は足元で定例の公開市場操作の資金供給を2回連続で見送っており中国のインターバンク市場では短期金利が急上昇しています。これ、今年6月に起きたシャドーバンキング問題の時と同じことが起こっているのです。6月も中央銀行はシャドーバンキングへの融資減を一掃しようと、当局が資金供給を止めたことがきっかけで金融システム全体が混乱し、リスク資産の下落を招きました。しかし結局は、中国当局が金融機関が必要な資金を確保できるよう市場に資金を供給、短期金利をコントロールすることを表明して事態は沈静化しています。

もし、先週の日経平均の下落、ドル/円相場の円高進行が本当に中国発の材料がきっかけなのだとしたら、これは下げたところが絶好の買い場です。6月の事例を振り返っても中国当局が引き金を引いて世界を混乱に陥れる事態を招くことはないと思われるからです。もし、中国が原因で世界同時株安のようなショックが訪れるなら、それは当局発ではなく、予想もし得なかったことがある日突然表面化するところから始まることでしょう。これをテールリスクと呼びますが、予想できる範囲の事態が大きな悲劇を生むことは現在の金融市場ではほとんど起こらないのです。週が明けて月曜はドル/円相場は下げ止まり、反騰していますが、月曜は中国リスクはほとんど市場で話題になることはありませんでした。
では他に先週の円高、日本株安の背景に他にどんな理由が隠されていたでしょうか。先週22日には米国の9月の雇用統計が発表されました。予想に反して良くない数字となったことで、市場では量的緩和縮小(テーパリング)時期が後ずれするのではないかと言う観測が高まりました。5月にFRBのバーナンキ議長が年内のテーパリング開始に言及したことから、9月にテーパリングが見送られた際には、ぎりぎり年内の12月のFOMCではテーパリング開始が発表されるだろうとの観測が強まっていたのですが、この12月も雲行きが怪しくなったと市場が反応したのです。
緩和縮小時期が先送りされるとの思惑ですから、マネーの先細りという懸念が後退します。米国株は雇用統計の数字の悪化にもかかわらず、上昇を続けているのはこのためです。そして、為替市場ではドルのバラマキは続くとの思惑で、ドル安が進行しています。これが円高ドル安を招きました。円高ですから、米国株が高くても日本株は売られてしまう...先週は、こうした米国の金融政策への思惑が市場を動かした可能性も大きかったのではないでしょうか。もし、この米国の金融政策への思惑が先週のマーケットを動かした要因として大きかったのであれば、ここで押し目買い戦略が正解とは思えません。米国政府のシャットダウンの影響で発表が止まっていた経済指標がこれから続々と出てきますが、これらの指標が悪ければ悪いほど、さらに円高進行となることが予想されるからです。実はこちらのリスクが足元では高まっているのではないかと感じています。
報道された材料が全てだったのか?!市場を動かした本当の要因は何だったのかを慎重に探り、市場に蔓延している思い込みを疑ってみることも時に重要です。見えない(わからない)時は手出し無用。あるいは素直にドル/円の日足200日移動平均線の攻防につくというのもまた一つの戦略ではありますが。先週はこのサポートを一時割り込みましたが、月曜再びローソク足の実体を持ってクリアにラインの上に抜け出ました。ここを割り込まないでいるうちは短期的に押し目買いでもいいでしょう。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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