第38回 都市部で進む少子高齢化 【北京駐在員事務所から】

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第38回 都市部で進む少子高齢化 【北京駐在員事務所から】

中国の人口構成は、一人っ子政策で子供の数が抑制されていることと、生活水準の向上で寿命が延びていることにより、急激な勢いで少子高齢化が進んでいます。

昨年、2012年には生産年齢(15歳から59歳)人口が、1949年の中華人民共和国建国後初めて減少に転じました。将来、労働力が不足し、経済成長の足かせとなることが懸念されています。
現在の一人っ子政策が続いた場合には、2015年ないし16年には総人口も減少に転じると予想されており、「未富先老」(豊かになる前に老いてしまう)が現実のものになりつつあります。

年金制度が未整備で、老後は子供に頼ることが一般的なため、夫婦がともに一人っ子の場合、双方の両親計4名を扶養しなければならず、負担は重いものがあります。
老親の世話を巡り夫婦が不仲になる、あるいは親子間で争いになる等の事例も増えているそうです。

中国の一人っ子政策は、違反者に高額の罰金を課す、あるいは違反者の氏名を公表する等厳格に運用されてきましたが、弊害も目立ってきたため、近年では例えば夫婦がともに一人っ子の場合に第二子を認める等、緩和が図られています。
ところが、特に都市部では、子育ての費用負担等の問題から、第二子が認められる夫婦でも「子供は一人だけ」と考える者が多くなっているそうです。

中国の中でも、特に少子化が進んでいる中部南京市の政府機関(計画出産委員会)が、第二子を持つことが認められる夫婦に対しアンケート調査を行ったところ、回答者の4割ほどが「二人目は持ちたくない」と回答しました。
南京市では、全人口に占める14歳未満の子供の割合が9.5%と、全国平均の16.6%を大きく下回っています。
一人っ子政策が緩和されたにも関わらず、夫婦が二人目の子を持つことをためらう理由としては、主に「育児の大変さ」と「教育費等の経済的な負担」が挙げられています。
中国では、夫婦共稼ぎが一般的ですので、小さな子どもの世話は祖父母や家政婦に頼ることが多く、祖父母が離れて住んでいる、あるいは家政婦の費用が賄えない夫婦にとっては、第二子を持つためにはハードルが高いということになります。

また、都市部では小学校入学時から受験戦争が始まっており、まずは進学実績に優れた小学校の学区内に住宅(需要が旺盛なため家賃は高いです。)を確保する必要があります。
将来、海外留学などの可能性も考えれば、子供は一人に留め、その子に出来る限りの愛情とお金を注ごうと考えるのが当然とも言えます。
「子供は一人」と考える夫婦も、本音では「子供自身のためには、本当は兄弟姉妹がいる方が良いのだが。」と述べており、揺れる心情がうかがえます。

このような状況から、専門家は、例えば夫婦のいずれかが一人っ子の場合に第二子を認める等、一人っ子政策の更なる緩和が必要と指摘しています。
ただ、上述のアンケート結果からは、制度変更によっても、特に都市部では容易には出産は増えないと考えられます。

子育ての大変さと経済的な負担が子供を持つことをためらわせる状況は、日本の少子化と同じですが、中国は人口が10倍で、一人っ子政策と急速な都市化、経済発展という特殊要因がありますので、変化は極めて速いものとなっています。対策が待ったなしなのですが、もはや有効な策は無いのではとの悲観的な声も聞かれます。
都市部では住居費等生活のコストが上昇しており、子供以前に若者が結婚に踏み切れないという、これも日本と同様の状況が発生しています。

日本に比べれば、まだまだ成長は続いており、賃金(所得)も増えていますので、そのような中で若い人たちが結婚や出産に前向きになれないことは本当に残念です。
住宅政策や教育等、様々な問題が絡み、改善は容易ではありませんが、何とか良い方向に向かうことを願いたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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