第86回 利下げ観測台頭でユーロ急落、今週のECB理事会で利下げはあるか?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第86回 利下げ観測台頭でユーロ急落、今週のECB理事会で利下げはあるか?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ユーロ/ドル相場は、7月の1.2760ドルを底に上昇を続けてきました。4-6月期のユーロ圏経済は7四半期ぶりに前期比プラス成長となり欧州景気が改善傾向にあることを好感してのユーロの買戻しや、米国の量的緩和縮小観測の高まりを受けた欧州勢によるパトリ(海外資産の手仕舞いによる欧州への資金還流)による新興国通貨売りのユーロ買いなどが大きな上昇要因となりましたが、9月以降は市場が予想していた量的緩和縮小が見送られたことによるドル売りなども材料視されました。こうした材料を受けユーロ/ドル相場は3か月あまりも上昇していたのですが、先週10月31日、上昇基調にあったユーロの売りが突然膨らみ、ユーロ/ドル相場が急落したのです。

相場を動かした犯人はユーロ圏の経済指標。
9月のユーロ圏失業率は12.2%で過去最悪。1年前は11.6%だったことやスペインなどが長引いたリセッションから脱却したことを受け、今月の数字は12%へ改善するという予想が多かったため、高止まりのままであることはネガティブサプライズ。また10月の消費者物価上昇率が0.7%と9 月の 1.1%から急低下、ECBの政策目標である「2%未満」の半分以下の水準へと一気に沈んでしまいました。この物価下落はこのところのユーロ高による下押し圧力も影響しているという見方も当然ながら出てきます。ECBがデフレを警戒して金融緩和に踏み切るという思惑が一気に市場に広がりました。これによりユーロが大きく下落したのです。

今週は8日金曜にアメリカの10月の雇用統計の発表がありますが、その前日7日木曜日のECB政策理事会が最も注目の材料となるでしょう。果たしてECBは今回の理事会で利下げを実施するでしょうか。ユーロはここから続落で下落トレンド入りとなったのでしょうか。

そもそも今回の理事会では、金融政策の現状維持がコンセンサス。経済指標の単月の急低下だけで即座に利下げに動く可能性は極めて低いことやユーロとの連動性も高いドイツ国債金利低下は一服し持ち直していることから、今回の利下げは見送られ、利下げは早くても12月、もしくは来年にずれ込む可能性の方が高いと思われます。ちなみにブルームバーグが68人のエコノミストを対象にしたアンケートではバンカメ・メリル、UBS、RBSの3名が11月利下げを予想、65人は11月は変更なしと予想しているようです。12月の理事会では、政策決定の参考にするために3カ月ごとに作成される経済予測を発表されるため、12月に初めて公表する15年の予測でインフレ見通しは低水準になる見込みとなればこの時に同時に追加の利下げを決めるとの観測が優勢です。

ユーロ/ドル相場の日足の一目均衡表をみても、分厚い雲にサポートされて下げ止まったところ。一旦は戻りを試す局面にあると思われます。また、7月からこの10月までの上昇トレンドをフィボナッチリトレースメントしてみると、ちょうど38.2%押し水準まで急落して下げ止まったことが確認できます。もし、上昇トレンドが崩れていないのだとすれば、この水準で下げ止まり、再びユーロ買いに回帰するものと思われます。現時点では今回の急落前の1.3830ドル台が天井だったか否かは判別することができませんが。

また、ここで注目したいのがCRB指数。米国内の各商品取引所等で取引されている先物取引価格から算出される国際商品先物指数ですが、足元で急落しています。商品価格が下落しているということはドル高であるということ。つまりユーロ安ですね。ユーロ/ドル相場が急落したことでCRB指数も急落しているのです。このCRB指数が275と6月の安値に面合わせとなっており、W底を形成する可能性も出てきています。(正確には今回274まで下落しており若干前回安値を下回っているのですが...)ここでもし、CRB指数が一旦反騰するならば、為替市場ではドル安になっているという相関関係。CRB指数が6月の安値を下回ってさらに下落することとなれば、ドル高ユーロ安がさらに進むこととなりますが、果たして?!

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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