第39回 上場廃止制度の強化 【北京駐在員事務所から】

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第39回 上場廃止制度の強化 【北京駐在員事務所から】

中国証券監督管理委員会(CSRC、規制機関)のトップである肖(シャオ)主席が、先週末に行われた中国上場会社協会の年次総会で講演を行い、収益力に乏しい上場企業に対して、速やかに取引停止と上場廃止の措置を講じられるよう、関係規則の改正を図る方針を示したと伝えられています。

肖主席は、「上場廃止制度は、中国の資本市場の重要かつ基本的な制度の一つ」と述べています。
規則改正により、証券取引所での上場廃止を容易にし、対象銘柄は店頭取引に移行させる方針とされています。日本のフェニックス銘柄制度と同様と思われます。

CSRCの報道担当者は、市場の規範維持のため、今後上場廃止制度の継続的な改善を図るとしています。
上場廃止制度が適切に運用されることで、資本市場での資金配分がより適切かつ効率的なものになると、市場関係者からは期待する声が挙がっています。

上海及び深圳の証券取引所では、2001年に上場廃止制度が導入されましたが、これまでに廃止された銘柄数は80に満たず、うち業績に問題があり廃止となったものは49銘柄となっており、全上場銘柄数(昨年末時点で2,492)の2%未満にとどまっています。
一方、新規上場は盛んで、2002年末の上場銘柄数1,223から10年間で倍増しています。
市場への参入一辺倒で、退出が限られ、新陳代謝が進んでいない状況と言えます。専門家は「市場は不健全」と指摘しています。

中国A株市場では、昨年10月から新規上場がストップしており、268社が上場申請を取り下げたものの、なお354社が申請中と伝えられています。
今週末の9日(土)より中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が開催され、今後の経済改革の方向性が示されるものと見られています。その後、年内にも新規上場が再開されると予想されており、円滑な上場のためにも、上場廃止制度の強化と適切な運用が期待されています。

上場廃止制度の強化は、一般論としては望ましいものですが、対象銘柄の株主にとっては財産権にもかかわりますので、実際の運用、特に上場済の銘柄への適用は極めて難しい問題です。
日本では、東証マザーズ市場に株価基準(株価が新規上場時公募価格の1割未満となった銘柄に退出を促すもの)がありますが、これも同基準導入以前の既上場銘柄への遡及適用は行われていません。

CSRCが、上場廃止制度を強化し、適切に運用することで、市場の健全性維持と個人投資家の保護を両立させることができるか、注目したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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