第87回 VIX指数を使え!ポジション管理はリスクを測ることが肝要 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第87回 VIX指数を使え!ポジション管理はリスクを測ることが肝要 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル/円相場や日経平均のチャートは5月23日に急転直下の下落となったものの、長期的に見れば大天井だったわけではありません。その後は乱高下を繰り返しながらのレンジ相場が長期化していますが、いよいよ値動きが収斂しボラティリティが低下してきています。
ボラティリティというのは価格の変動の激しさを表す言葉ですが、ボラティリティが高い時というのは相場が安定した状態ではないということです。何か問題が起こって相場が急落したり、突如大きなニュースが出て急騰したりすればボラティリティは上昇しますね。しかし、急騰、急落はそれまでの平均値から大幅に乖離してしまうことでもあるため、その直後に一転急落したり、急反騰したりするリスクも高いのです。ヘッジファンド勢はボラティリティが高まると、こうしたリスクを回避するため保有していたポジションを減らすとされています。ボラティリティが高まれば、自動的にこれまで買っていた資産を売る、あるいは売っていた資産を買い戻す行動を取るということで、これがさらなる価格の変動に繋がってしまうと可能性が高まるということでもあり、それ故にファンド勢はなによりもボラティリティを重要視しているとも言われています。

ボラティリティを見る上で最も知られているのがVIX指数。別名恐怖指数とも呼ばれているこの指数はシカゴのオプション取引所が、アメリカのS&P500指数のオプション取引のボラティリティを元に作成している指数ですが、マーケットが揉みあっている時や、穏やかに上昇を辿るトレンドが形成されている時にはおおよそ20前後で推移しています。何かニュースが出て株価が暴落すると、VIX指数の数値は上昇するのですが、目安として30を超えると投資家のマインドは悲観的となり、40を超えると多くの投資家がパニックに陥っている状態だとされています。40を超えているような相場では株は投売り状態となっています。この先何が起こるのかわからず不安が高まり、投資家はとにかくキャッシュ化することに奔走している異常事態と言えるでしょう。このVIX指数の史上最高値は、2008年10月24日の89.53です。その一週間でNYダウ平均株価は886ドル安という大荒れ状態でした。そう、リーマンショックです。24日のドル/円レートは一時、98円台から90円台まで7円以上の円高が進みました。VIX指数の上昇は株式市場だけでなく通貨市場においても参考となる指標です。VIX指数が高い時には、ポジションも減らすことが肝要、逆にVIX指数が低く、マーケットにトレンドが芽生えてきたようなら、積極的に買うポジションを構築していけばいいのです。

そして現在のVIX指数。12.6近辺ときわめて低い状態にあり、投資家心理は現状のマーケットにリスクを感じていないことが確認できます。米国株市場には高値更新していることから1929年の大恐慌時のチャートパターンに酷似しており暴落を示唆するという見方も出ているようですが、VIX指数を見る限りでは不安心理の高まりはなく、むしろ米国の緩和縮小の時期を巡って、経済誌指標が良好であれば株の下落が懸念される環境にある割には、非常にしっかりとした値動きを見せています。10月の雇用統計は政府機関の閉鎖の影響でよくない数字となるものと予想されていましたが、雇用者数は大幅増となったことで、一気にドル高が進みました。緩和縮小が早まるとの観測から株が売られるというシナリオも描けたはずですが、株は大幅高、VIX指数も雇用統計の数字を受け緩和縮小開始が早まる可能性をリスクとしてとらえたのではなく、米国の景気がしっかりした回復をみせていることを歓迎する動きを示したと言えるのです。

そしてドル/円相場も、三角持合いを上放れてきました。これまでも三角持合いを抜けて期待が高まったものの騙しだった、ということが幾度も繰り返されていますが、今回はどうでしょうか。ドル/円相場は緩和縮小時期が早まるとの思惑が広がることはドル高要因ですので、米景気指標が良ければ上昇するのですが、それによって緩和マネー縮小観測から米国株が売られる展開となれば、日本株も売られるだろうという連想からどうしても上値が重くなってしまい、レンジをはっきりと抜けきらずにいました。しかし、米国指標が良好でなお、米株が買われる環境となってくれば、センチメントは緩和縮小を怖がるより、景気回復を歓迎しているということでスケールの大きなリスク選好相場になる可能性が出てきたということでもあります。

そして相場が揉みあいを抜けてなお、VIX指数が上昇することなく安定推移するなら、息の長いトレンドがようやく生まれると考えていいものと思います。今週からドル/円相場、そしてクロス円相場には新しい上昇トレンドが発生したとみていいでしょう。100円の抵抗は強いものの、そろそろここを突破する準備が整いつつあると思っています。ただし、何か突発的なニュースがあって、VIX指数が急上昇した場合には、ポジションを減らしスタンスを変えることが肝要です。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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