第40回 北京の百貨店事情 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第40回 北京の百貨店事情 【北京駐在員事務所から】

フランスの高級百貨店ギャラリー・ラファイエットが、9月に中国初の店舗を北京にオープンし、来店客で賑っているそうです。
同社は15年前に北京に進出したものの、当時はまだ高級品市場が成熟しておらず、短期間で撤退したそうで、今回は中国市場への再挑戦になります。
私はまだ足を運んでいないのですが、ウェブサイトを見ますと、カフェのアンジェリーナ(東京ではプランタン銀座などに出店しています。)もあるようで、同店の有名なモンブランが北京でも食べられるかとちょっと期待しています。

中国人はブランド品大好き、買い物大好きですので、フランス、イタリアなどヨーロッパ諸国は大変人気のある旅行先です。
パリを訪れた中国人観光客に最も人気のスポットはエッフェル塔で、第二位がギャラリー・ラファイエットの本店だそうです。凱旋門、ルーブル美術館やオペラ座よりも人気なのですから、中国人が如何に買い物好きかがうかがえます。

新店舗は天安門から西に1㎞ほどの西単(シーダン)というエリアにあります。若者が集まる街で、東京に例えると渋谷でしょうか? 週末は大変な人出になります。
この立地がポイントで、ギャラリー・ラファイエットの担当者は、店舗の位置づけについて、「高級品の販売だけではなく、若者を中心とする中間所得層の消費者に対し、最先端の流行を提案する。」としています。
取扱商品の中心価格帯は1,000元(約16,000円)から8,000元(約13万円)とのことですので、安いものではありませんが、ちょっと奮発すれば手の届く水準でしょうか。
これからクリスマス商戦になりますので、プレゼントを購入する若者でますます賑うものと思われます。

一方、専門家は西単エリアへの出店について、「富裕層や中高年層の集客には厳しく、ブランド品の販売などには苦戦するのではないか?」と指摘しています。
東京の渋谷は、後背地が高級住宅街で、東急百貨店の本店があるように「若者一辺倒」の街ではないのですが、西単はオフィスと若者向けの商業施設ばかりですので、客層が限られる懸念は確かにあります。
ギャラリー・ラファイエットが、10年後、20年後をにらんで、まず若者への訴求を図る戦略を取っているのであれば、大した先見の明と言えそうです。

北京の百貨店業界は、国内資本、欧州系、香港系、韓国系などがひしめき合い、熾烈な競争を展開しています。
日系では、三越が台湾企業との合弁で進出しているほか、そごうも中国企業への商標提供をしています。
また、イオンやイトーヨーカ堂も、市中心部から少し離れた住宅街に大型店舗を展開しており、こちらでは百貨店として認知されています。
三越の店舗はいかにも高級な造りで、一方韓国資本の店舗は庶民的な品揃えを売り物にしています。
今後ますます拡大する中間層や富裕層の需要を巡り、各社がどのような戦略を講じ、戦って行くのか注目されます。

北京の中心部にいますと、至る所に欧米ブランドの店舗があり、市場の大きさが感じられます。
一方、農村部あるいは内陸部には、そのような世界と全く無縁の貧困層が多数存在し、テレビニュースを見るだけでも、否応なしに貧富の差の問題を認識させられます。
北京の繁栄ぶりを目にしますと、この貧富の差は今後拡大こそすれ、縮まることは期待薄と思えます。経済成長の減速、少子高齢化や民族問題も重要ですが、貧富の差こそが、中国の最大の不安定要因(時限爆弾?)のように思えてなりません。政府がこの問題にどのように取り組むのか、長い目で見守りたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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