第88回 ドル安円安ってどういうこと?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第88回 ドル安円安ってどういうこと?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル/円相場は長いトンネルを抜けました。昨年11月の野田元総理の解散宣言から始まったドル高円安の上昇トレンドは5月23日の急落以降揉みあいが続いていましたが、市場関係者の多くが注目していた三角持合いを上放れしたことで、いよいよ新たな上昇トレンドが発生しました。ここからは素直にドル/円相場は押し目を買う戦略です。以上。...と、これではコラムになりませんので、その背景と今後の展望を。

昨年11月から5月までのドル/円の上昇は、日本主導でした。「円売り」によるドル高です。311以降、日本はエネルギーを海外から輸入せざるを得ない状況に陥りました。貿易赤字国に陥ったことによる需給の大転換が円安の主因と言えますが、同時に政権交代によるアベノミクス、日銀による異次元緩和を囃した海外短期筋による円売り圧力がスケールの大きいトレンドを形成しました。長期間放置され続けて来た円高の終焉であり、円安トレンドの目覚めであるとして、世界中が円売りで参入してきたのです。

しかし、5月22日にFRBバーナンキ議長が年内のテーパリング(量的緩和縮小)を示唆する発言をしたことで、市場の注目は一気に米国に向かいました。緩和縮小の可能性を示唆しただけですが市場は一気にリスク資産の縮小に動きます。新興国株や通貨が売られたのもこのためです。日経平均も大暴落となりました。海外勢が円安日本株高のトレンドにかけて作ったリスクポジションが一気に逆流したのです。売られた円は買い戻され、半年にも及ぶ円安トレンドは一度終了したのですが...。

それから半年近くたった今もまだテーパリングの時期を巡っての議論が続いていますが、先週は次期FRB議長のジャネット・イエレン氏が公聴会で緩和策の長期化を思わせるハト派発言をしたことで、緩和政策が長期化するという思惑が市場を覆いました。市場には再びリスクを取る動きが広がり、米国株式市場ではダウ平均、SP500 などのインデックスが軒並み史上最高値を更新、日経平均も三角持合いを上抜け15,000円大台を軽々と突破しました。

しかしながら、為替市場では緩和の長期化思惑というのは「ドル安」です。早期テーパリングの思惑が広がればドル高になりますが、長期化であればドル安なのです。それなのにドル/円は持ち合いを上放れしましたのはどういうことでしょうか。

これはいわゆる「リスクオン」相場に入ったということなのです。

米株が上がる際にはドル安が好ましい。日本株が上がる際には円安が好ましい状況です。そしてそれが同時に起これば実はドル/円は膠着して動きにくくなるのですが、今回はドル/円相場が大きく上昇しました。これは日本株主導で為替が引っ張られたものと推測されますが、要するに、ゼロ金利である円やドルを売ってリスク資産を買おう!という前向きな動きが出てきたということです。

となると、おのずと注目されるのがユーロです。ドルが下がり、円が下がるのであれば、ユーロが強含むことになります。今月ECBはユーロの政策金利を引き下げたことで、ユーロは急落していましたが、イエレン氏発言があってからは下げ止まっています。ソブリン危機やギリシャ破綻危機でユーロは大きく売り込まれました。ECBが7月に公表した年次報告によると、2012年に世界の外貨準備に占めるユーロの比率が1.2%ポイント低下し23.9%となっていました。世界外貨準備に占めるユーロ比率、3年連続で低下していたのです。ユーロ安の恩恵を受けドイツの貿易黒字はこの9月は200億ユーロ突破、過去最大にまで膨らみました。貿易黒字になるということはここからはユーロ高圧力が高まるということでもあります。日本が長らく円高に苦しんだのも膨大な貿易黒字があったからでした。しかしこれは311以降構造の転換が起こっているので、日本は円高から円安にトレンド転換しました。ユーロはドイツの過去最大の貿易黒字が今後のユーロ高を招くだろうことが考えられる状況になってきているのです。また、世界の外貨準備におけるユーロの低下が是正される可能性も大きく、外貨準備によるユーロ買いが出てくることとなればさらにユーロは上がっていくこととなるでしょう。

ということで、マーケットはリスクオン相場のスタート。ドル安、円安ですので、最も注目されるのは実はここからのユーロの上昇なのではないか、と見ています。ドル/円のパフォーマンスより、ユーロ円のパフォーマンスの方が注目かもしれません。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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