第89回 GPIFが動き出す~ドル ドル/円相場は本格円安トレンド再開 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第89回 GPIFが動き出す~ドル ドル/円相場は本格円安トレンド再開 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

このところよくニュースで取り上げられるGPIF。日本の年金積立金管理運用独立行政法人のことですが、簡単に言えば「世界最大の機関投資家」。その運用総額は121兆円にも上るため、その運用先を巡ってマーケットが大きな関心を寄せているのです。
世界の公的年金と比べての規模は段違いで、マーケットで積極運用をしていることで大きな影響力を持つ米国のカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)でさえ26兆円程度。その5倍近くもの規模のGPIFの今後の運用方針を巡り、先週水曜日、有識者による最終報告書が発表されました。

というのも、 GPIFの資産運用のあり方をめぐってはかねてより国内外から問題点が指摘されてきていました。OECDは2010年12月、GPIFが世界最大規模の運用資産を保有するにもかかわらず、きわめて低リスク資産に偏重しているその運用スタイルを批判的に分析しています。これが、アベノミクスでいよいよ動き出したのです。

現在のGPIFの基本ポートフォリオは国内債券が60%、国内株式が12%、外国債券が11%、外国株式が12%となっています。きわめて低リスクに偏重している、というのは日本国債に60%もの資金が偏っていたことを指すものですね。日本がデフォルトしない限り安全ということではありますが、しかしこの低金利では全く資金が増えません。

これを1~2年後の姿として国内債券が35%、国内株式20%、外国債券20%、外国株式20%という比率にすることが示されました。日本国債への投資が大幅に減らされる一方、日本株を8%も増やすことが明らかに。120兆円の1%は1.2兆円です。8%となれば、9.6兆円もの資金が日本株市場に入ってくることになるのです。実際にはこの金額云々よりも、日本が掲げたアベノミクス、異次元緩和相場がやはり本気なのだということを示したという事実が大きい。これをきっかけにアベノミクス第2幕相場を期待する外国勢が再び雪崩を打って日本株市場に入って来るということに繋がるのです。11月10日から11月16日の対外及び対内証券売買契約状況では海外投資家による日本への株式投資が3週連続の買い越しで、買越額が1兆2949億円と過去2番目という大規模なものとなりました。GPIF最終報告書と時期を合わせ、欧州などの年金基金も一気に日本株を買ったとされています。

さらに、外国株式が12%から20%へ8%、外国債券が11%から20%へと9%も増やされます。これが為替市場では円安圧力になります。外国の株式や債券というのは主に米国、欧州だと思われますが、この外国債券を購入する際にはまず、GPIFのもつ円を米ドルやユーロに替えなくてはなりません。つまり、外債や外国株式購入はドル/円やユーロ円の上昇に繋がるのです。これも為替市場にも大きなインパクトをもたらしました。その思惑がドル/円相場では100円の大台を固める円安進行に。ユーロ円は137円台にまで上昇につながったのです。

また、財務省発表の数字ではこうして海外の機関投資家が日本株を積極的に買いに来ている時に、日本の投資家は6週連続で海外の中長期債を買い越していることが確認できます。

いよいよ、世界最大の機関投資家、日本の年金基金が動き出す。このことが、世界の年金基金やヘッジファンドをも動かすでしょう。日本株高、そして円安トレンド第2幕は始まったばかりです。米国の緩和縮小の話題や中国のリスクなどに冷やされることもあるかと思いますが、ここからは急落する局面があれば臆せず丁寧に安値を拾うトレンドフォローで。今年の高値を超える日も近いと思っています。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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