第42回 国家公務員採用試験 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第42回 国家公務員採用試験 【北京駐在員事務所から】

11月24日(日)に、全国一斉に国家公務員採用試験(筆記試験)が行われ、当日のテレビニュースは試験会場の様子や受験者へのインタビューを盛んに伝えていました。
日本の大学入試センター試験と同じような報道ぶりです。

中国では、大学進学のための全国試験(日本のセンター試験に相当)は「高考」、国家公務員採用試験は「国考」と呼ばれており、どちらも一大イベントになっています。

今年の出願者は152万人で、昨年の150万人から2万人の増加となりました。当日の受験者数は112万人で昨年と同水準でしたが、採用予定者数が19,000人と昨年の2万人から1,000人減少したため、競争倍率は56倍から59倍へと上昇しました。
数字のみでの評価は難しいですが、日本の国家公務員試験の競争倍率はここ数年10倍から15倍程度となっていますので、「狭き門」であることがお分かりいただけるかと思います。

中国では、大学卒業生の増加と経済成長の鈍化で、若年層の就職難が深刻化しており、低収入の職しか得ることができず、大都市の狭い住宅で集団生活を余儀なくされる高学歴ワーキングプア(通称「蟻族」)の存在が問題となっています。
公務員は、安定性に加え、住宅の取得に特典があるなど、福利厚生が手厚いこともあり人気が高く、競争は激烈です。

採用枠は組織、地域あるいは職種により細かく分かれていますが、人気が高いのは都市部の事務系の職種です。今年最も人気が高かったのは国家民族事務委員会(民族政策と少数民族の保護を所管)の研究職で、7,200名が出願したそうです。
他に外交部(日本の外務省に相当)、国家知識産権局(特許等知的財産権を所管、日本の特許庁に相当)や科学技術部(日本の文部科学省の一部に相当)も多くの出願者を集めたと伝えられています。

試験は、午前に実施の択一式(行政分野の能力試験)と午後の論文からなり、今年は論文試験の時間がこれまでより30分間延長され、3時間になりました。
受験者の感想の多くは、択一式試験は全般に平易な内容ながら、出題数が多く時間に追われたとしており、一方、論文試験の時間延長は、受験者の能力をより多面的に評価できるとして概ね好評でした。

安定性や処遇面からの人気に加え、国家公務員試験が多くの受験者を集めていることの理由として、専門家は「選抜の公平性」を挙げています。
試験から採用までの一連の手続についてのインターネットでの開示や、試験中に違反行為を働いた者への罰則のルール化と公表など、最近数年間に行われた改善策が評価され、出願者の増加につながっています。
今年は、視覚障害を持つ受験者のために、別室での受験と問題読み上げの補助の措置が新たに取られたそうです。
日本と同様、試験準備のための専門学校があるのですが、そちらも入学者が増加し盛況と伝えられています。

競争倍率の高さもあり、出願者は「国家公務員志望一本」という訳にも行きませんので、多くは今後国有企業、公的機関や民間企業にも職を求めることになります。競争はまだまだ続きます。
民間企業の採用増と処遇改善により門戸が少しでも広がり、多くの若者がその能力を十分に発揮できる職に就けるよう、望みたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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