第15回 相場のテーマを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第15回 相場のテーマを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。月日はあっという間に過ぎ、今年もついに師走を迎えてしまいました。忘年会シーズンに突入となります。みなさま、飲み過ぎにはくれぐれもご注意を。
一方、株式相場は膠着状態からついに脱し、上げ基調に勢いがついてきました。前回のコラムでも「そろそろボックス圏相場からの脱却が見えてきたかも」と書きましたが、その傾向はより鮮明になっているように感じています。年内は証券税制変更を見越しての利食い売りが重石となるでしょうが、市場の先高観は揺るがないと考えます。ただし、懸念材料も出てきました。先日の中国による防空識別圏設定です。対話を重視した行動とは言い難く、振り上げた拳をどう抑えるのか、暴発リスクはないのか、など場合によっては軍事的緊張が一段階増した状態になりかねません。決して軽視できないイシューであり、事態の進捗次第では株価への影響も当然避けられなくなるでしょう。平和的解決を望みますが、頭の隅には入れておかなければならないリスクと考えます。

さて、「テーマを読み解く」とした本コラムですが、15回目となる今回は、日経平均先物を取り上げてみたいと思います。株式投資に本腰を入れられている方ならば、日経平均先物の動向が相場に大きな影響を与えていることを実感されているのではないでしょうか。本来はデリバティブによるヘッジ手段であり、あくまで日経平均株価を主体にその将来値を見通しての取引なのですが、ここもとはこの動きによって相場の方向性が大きく左右されることも珍しくありません。今や先物価格が主体となって現値を決める傾向が増しているのです。

実はかつて、バブル崩壊後の90年代も、株価の下落を先物が主導しているとして「尻尾が胴体を振り回す」と論評されたことがありました。しかしこの時はバブルの後遺症が予想以上に酷く、結局は「先物が振り回していた」のではなく、ファンダメンタルズを如実に反映していたものであったと理解されています。今回も後から振り返ってみると、ファンダメンタルズ通りであった、いうことになるのかもしれません。とはいえ、当時とは状況が異なる点があるのも事実です。筆者は市場が冷徹な先見性を持つと強く確信していますが、先物が指標の主体となっている現状についてはかなり歪な構造になっていると感じざるを得ません。額面通りに市場からのメッセージを受け取るにはよく吟味しなければならないと思っています。

この懸念の背景にあるのは、日経平均株価そのものの構成の歪みです。現在、日経平均のウエイトはファーストリテイリングが9%超、ソフトバンクが6%超、ファナックが4%超、それぞれ占めています。つまり、この3銘柄で日経平均の約20%が占められていると言ってもよいのです。例えば1日に3%も動けば(現状の日経平均では500円弱)、暴騰・暴落と位置づけられる状況において、このウエイトは強烈です。極端な話、この3銘柄の株価動向が日経平均を左右すると言っても過言ではないでしょう。先物を見ながら現物がそれに近い値となるのは当然ですが(既にこの段階で主客転倒ですが)、てっとり早く確実に現物をその値に近づけるには、この3銘柄の売買を活発化させる、という流れが少なからずあるように感じています(ここでも主客転倒を感じざるを得ません)。なお、誤解がないように付け加えれば、上記3銘柄は日本を代表する「成長」企業であることは疑いの余地もなく、その成長の結果として指標への影響度が高くなってしまったという事実です。これが3銘柄の企業努力の結果であることは論を待ちません。

そしてもちろん、これらは全てルールに則ってのことであり、主客がどう転倒しようがそのこと自体を問題にすべきではありません。しかし、市場の示す指標とその先見性は、個別銘柄の影響が大きいだけに、その汎用性が低下しつつあるリスクは認識されておくべきでしょう。換言すれば、上記3銘柄を凌ぐ成長企業がどんどん出現することで、結果的に3銘柄の構成比が下がっていく、というのが日本にとってのベストシナリオになるのだと考えます。意地の悪い言い方をすれば、日本にまだそれだけの成長企業が出てきていないということを、市場は先見性を以て示しているということなのかもしれません。

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