第43回 株式新規上場が再開へ 【北京駐在員事務所から】

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第43回 株式新規上場が再開へ 【北京駐在員事務所から】

中国証券監督管理委員会(CSRC)は、先週末11月30日(土)に、株式新規上場(IPO)の再開に向けた制度改革に関する声明を発表しました。
中国の国内株市場では、上場企業による情報開示(ディスクロージャー)の不正やインサイダー取引等、問題行為が相次いで発生したため、CSRCは不正の撲滅と上場企業の健全性向上を進めました。
この影響を受け、IPOは昨年10月より一年以上に渡りストップする事態となっていました。年内一杯をかけ所要の準備を行った上で、年明けより再開される予定です。

現在、再開後速やかな上場を予定している銘柄が50ほどあり、これらは来年1月中の上場が見込まれています。
そのほかに、上場予定企業760社が審査待ちで、これら待機組の審査完了は来年の末くらいになるものと見られています。

市場では、再開によりIPO銘柄に資金がシフトすることへの懸念が広がっています。
声明発表後の取引初日となった2日(月)の上海総合指数(主要銘柄により構成)は0.6%の下落にとどまりましたが、IPO再開の影響をより強く受けると見られる深圳証券取引所の新興市場「創業板」の指数はマイナス8.2%と、2009年の市場開設後最大の下落となりました。
もっとも、市場全体が低迷する中、創業板指数は年初から78%上昇していましたので、市場関係者は利益確定の売りが出て当然との冷静な見方をしているようです。
IPO再開後は、既上場銘柄からの資金シフトが顕在化し、一段安となることも予想されますが、これもIPO停止で需給バランスが崩れ、企業の実力以上に株価が上昇した部分の剥落であり、中長期的には必要かつ望ましい調整と見られています。

新興市場銘柄の下落とは対照的に、金融セクター、特に証券株は、IPO再開による取引増が収益に寄与するとの観測から上昇しました。銀行株も、投資の活発化による資金移動や融資のニーズへの期待感から堅調であったと伝えられています。

中国では、これまでIPO銘柄につき、上場後の収益性、成長性についても当局による審査の対象としていたのですが、CSRCは声明の中で、今後は当局の上場審査は適合性(上場企業としての健全性)に関する内容に特化し、企業価値や投資リスクに関する評価、判断は市場(投資家)に委ねるとしています。
当局の関与を限定的なものとし、市場の自律性を尊重するとの方向性は、現在政府が推進している経済構造改革と一致するものです。規制当局には、市場機能の活用と投資家保護の両立という難しい舵取りが求められることになります。

IPO銘柄は小型のものが多く、資金吸収の規模も限られるため、再開後も主要銘柄への影響は限定的と見られています。一方、市場全体については、取引の活発化を期待する声と、既上場の大型銘柄による増資(資金吸収と株式の希薄化)を懸念する声が交錯しており、しばらくは方向性を模索する動きが続くと予想されています。

日本でも、12月に入り新規上場ラッシュの時期を迎えています。
IPO銘柄のパフォーマンスが、投資家心理や市場の活気に大きな影響を与える点は、日本も中国も同様です。
中国株式市場で、不正行為や相場の急落でIPOが再びストップすることなく、来年は既上場銘柄とともに良いパフォーマンスを見せてくれることを期待したく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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