第91回 円安ドル安ってどういうこと?!リスクオン相場とは 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第91回 円安ドル安ってどういうこと?!リスクオン相場とは 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

11月のアメリカの雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比20万3000人増と、市場予想の18万人増を上回る伸びとなりました。失業率も7%に低下、2008年11月以来5年ぶりの水準に改善しています。米国の力強い景気回復に確信を持ったマーケットは12月のFOMCでのテーパリング(量的緩和縮小)への思惑を強めたにもかかわらず、NYダウは198ドルの大幅高、シカゴ日経先物は1万5555円と週末の日経平均株価の終値1万5299円よりも256円高い水準で取引を終えています。ドル/円相場も102・95円まで上昇、全面リスクオンの様相となりました。

12月のテーパリングの思惑が強まったにも関わらず、米国株式が崩れることなく上昇で終わったということは、すでにこの材料がマーケットのネガティブファクターではなくなったことを表しているのかも知れません。これまでは米国の経済指標が良ければ、テーパリングの思惑が強まり、市場に放出されるドルの量が減少していくという見方から米株が弱含む展開で「景気の良いニュースはマーケットには悪いニュース」だったものが、先週末の雇用統計を受けての動きは「景気の良いニュースはマーケットにも良いニュース」に変わったのです。

この先マーケットはテーパリング開始時期を探るというひとつの大きなテーマを織り込んでしまったため、ネガティブファクターが取り払われたと見なし、総強気に傾くことが予想されますが、面白いのは、ドル/円相場で見ればドル高円安なのですが、ユーロ/ドル相場や豪ドル/ドル相場、NZドル/ドル相場で見ると、ドル高ではなくてむしろドル安になっていたということ。米国指標が良いからドル買いだったわけではないのです。米国指標が良いから、リスクを取るトレード(ドルを売って外貨を買う動きが強まる)「ドルキャリー」取引が強まったのです。

リスクオン相場には「ドル安、円安」という特徴があります。ドル安なのに円安ってどういうこと?!と疑問に思われるかもしれませんが、要するに低金利の通貨を売って(借りて)ドルや円よりも金利のある通貨アセットに投資するというリスクを取って取引をすることを言います。オーストラリアやニュージーランドなど日米に比べれば魅力的な金利ですね。だからこうした通貨が買われるのです。逆にリスクオフと呼ばれる不安心理が高まる相場環境の時には「ドル高、円高」となるのです。リスク資産を処分して基軸通貨であるドルに戻す動きや、安全資産とされる円に戻す動きが出るというわけです。しかし、円が安全資産であるという考え方は震災後、貿易赤字に転じてしまったことや異次元緩和に踏み切ったことなどで、すでに一昔前のものかもしれませんが。

では、ドル安円安なのに、何故、ドル/円が上昇するのでしょうか。

これは日米の金融政策が真逆のバイアスにあるためです。米国は緩和縮小に向かっている一方で日本は異次元緩和策が始まったばかり。この2か国の通貨の強弱では円の方が圧倒的に下がる可能性を秘めています。ということで、ドル/円でも円売り圧力の方が強いのですが、日銀は来年にも追加緩和策を講じるだろうという思惑も強く、ユーロ円やNZ円、ポンド/円など他国通貨ペアで見ても、最も売られやすいのが円ということになります。

雇用統計を受けて来週の17~18日のFOMCではテーパリング開始が示されるか否かが注目となります。次のマーケットの最大の注目点はFOMCとなりますが、その前に、長期的な税制変更や歳出削減、今年 3月から始まった強制歳出削減措置の修正などを検討し修正案の提言を行うことが求められている、超党派委員会の財政改革協議は13日が期限とされています。この日は日本の株式市場ではメジャーSQということで、マーケットが全面総強気の様相を呈していても、イベントをこなす過程においては急落リスクもあることをお忘れなく。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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