第92回 IMM通貨先物ポジションの円ショート増がリスクに?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第92回 IMM通貨先物ポジションの円ショート増がリスクに?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

12月13日、ドル/円相場が103・925円まで上昇、今年の最高値を更新する円安ドル高進行となりました。5月23日に103・74円という高値を付けた後、日経平均の暴落とともに大きな下落を強いられたドル/円相場、以降長らく続いたレンジ相場をこなしての三角持合いブレイクでテクニカル的にはここから更なる円安進行となると見られますが、「IMM通貨先物ポジションの偏り」を警戒するコメントが見られるようにもなって来ました。IMM通貨先物ポジションとは?!そしてどのように見て分析に取り入れて行けばいいのでしょうか。

12/3現在のシカゴのマーカンタイル取引所(CME)のIMM通貨先物ポジションのネット円売り先物ポジションは13万3千枚にまで積みあがってきました。2007年の水準にまで到達したことを今後の円高要因であるとする見方もあります。

このIMM通貨先物ポジションとは、短期筋や投機筋、いわゆるヘッジファンドなどによる投機的なポジションを示しています。このポジションの推移をみているとドル/円相場が三角持合いを上抜けて、一層の円安進行となった11月頃からこのIMMの円売りポジションが急増してきています。つまりヘッジファンド勢が一気に円売りドル買いのポジションを膨らませて来た、ということです。これが足元での円安ドル高のトレンドに大きく寄与していることは間違いないでしょう。

ただし、ヘッジファンド勢がマーケットのトレンドを作ることはありません。中長期的な相場の大きなトレンドを作るのは各国の金融政策の違いであり、貿易によって起きる為替需要。何故なら実需と呼ばれる輸出業者や輸入業者による為替取引は反対売買をすることはない「買い切り」あるいは「売り切り」の玉。海外で得た利益送金でドルを円に換える際に起きる為替、原材料を買い付ける際に必要となってくるドルを買う際に起きる為替は、手仕舞いと言う行為が生じませんね。日本は3・11以降、LNGを膨大に輸入しています。これはLNG為替などと呼ばれていますが、LNGを買うために膨大なドルが必要となることから為替市場に於いては大きな円安要因となっているのです。

しかし、ヘッジファンド勢が通貨先物市場で取引するポジションは、短期的に利ザヤを取ろうとする取引。先物取引ですので必ず決済する時が来ます。円売りポジションが大きくなればなるほど、円を買い戻すインパクトが大きくなるということでもあります。買いポジションが過大になれば相場下落、売りポジションが過大になれば相場上昇の可能性が高まっていると考えられるのです。

このIMM通貨先物ポジションが2007年来の水準にまで「円売り」のポジションが膨れ上がってきたことを今後の円高リスクとして警鐘を鳴らす向きも出始めました。果たして、今、このポジション残高は警戒水域にあるのでしょうか。
私はまだ現時点でこの残高が、警戒水域にあるとは見ていません。

まず一つに先週末に発表された最新の10日時点の円売りポジションは12万9711枚と3日時点よりも若干減少しています。IMM通貨先物ポジションは毎週金曜に、その週の火曜日時点の数字が発表になります。現在の状況を表すものではないため、その増減の傾向を目安にとどめておく程度に使うものと考えたほうがいいでしょう。最新の10日時点の数字は円売りポジションを取る勢いが少し鈍ってきている可能性があるというものでした。これが2週、3週と減少していくようなら、その過程でドル/円相場も上昇の勢いが止まり、調整を強いられる流れとなるかもしれませんが、ドル/円相場が今年の最高値を超えてきたのは13日の金曜日。10日火曜時点でファンド勢は先週よりも円売りを膨らませていなかったのですから、先週末に今年の最高値を更新する際に見せたドル/円の上昇の背景には、ファンド勢の買いだけではない、別のプレーヤーの買いが大きく入っていたものと推測できます。詳細は不明ですが、ひょっとしたらそれはGPIFの外債投資であるのかもしれません。先週は、GPIFの報道も多く飛び出した1週間でしたね。つまり、ファンド勢がさらに円売りポジションを増やし偏りが大きくなっているという状況が一旦収まった可能性があること、さらに、ファンド勢以外にもドル買いをしている向きが相場を支えてきていることが、ポジションの偏りの巻き戻しというリスクを軽減しているものと考えます。

また、この円売りの過去最大の偏りは2007年6月の18万8000枚でした。2007年はファンド勢だけでなく、日本の個人投資家もこぞって外貨投資をしてドル買いのポジションを膨らませていました。そう「円キャリートレード」です。日本の個人投資家によるスワップポイント(金利差収入)狙いのドル買いに海外勢が「ミセスワタナべ」と呼んで恐れをなした時代。サブプライムショック、リーマンショックがこのポジションの巻き戻しを招き、ドル/円相場は120円台から70円台にまで円高となるサイクルに突入したのですが、当時のリスクはIMM通貨先物に加えて個人投資家によるポジションも膨大だったことです。いずれにしても、過去最高である18万8000枚に遠く達していない今、IMM通貨先物ポジションの円ショート増がリスクであるとは考えにくいというのが結論。ただし18万8000枚、この数字に近づいてきたら警戒されることもあると覚えておいてください。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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