第18回 政治を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第18回 政治を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、あけましておめでとうございます。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。都合二週間のお正月休みでしたが、いかがでしたでしょうか。本日は、2014年の大発会です。巡りあわせとはいえ、年の締め括りである大納会に続き、一年の始まりでコラムを書けるというのは嬉しいものがあります。2014年もよい一年でありますように。また引き続き、今年もよろしくお願い申し上げます。

さて今回取り上げるテーマは、まだ株式市場が動き始める前でもあり、「政治」に注目してみたいと思います。政治は、年末よりひょっとすると2014年に大きな波乱が起こるかもという懸念が急に湧いてきた視点となります。昨年11月末より、中国の防空識別圏設定、粛清人事などによる北朝鮮指導部の暴走懸念、日本では首相の靖國神社参拝と、アジアでの緊張は高まる方向となっています。しかし、株式市場はこれまでのところ取り立てて大きな反応を見せず、むしろ景気回復に注目しての上昇相場を演じてきました。中国も内政問題や国際世論を考えれば極端な行動には出難い、日本も軍国主義化などはない、と見れば日々のニュースに過剰反応する必要はない、ということなのでしょう。筆者は市場の先見性、バランス感覚というものをかなり信じているのですが、キナ臭い報道が増える中、市場のこの見立ては取り敢えずの安心材料ということができると思っています。

とはいえ、政治は常に市場に強い影響を与えることを忘れてはいけません。昨年末に日経平均16,000円、ドル/円105円を達成しましたが、これは実に5~6年ぶり、福田内閣・麻生内閣以来の水準です。この間の政治はどうだったでしょうか。(批判も多かったとはいえ)強力だった小泉内閣以降、自民党への批判が増え、ねじれ国会となり、政権交代、その後の民主党政権の迷走と、坂を転がるように政治の求心力は低下することとなりました。過去5~6年の株価低迷は政治低迷としっかり重なります。そもそも経済と政治は車の両輪であることは歴史を見ても明らかです。両輪の片方がヘタって来ればもう片方も動けなくなるのは当然でしょう。かつて「経済一流、政治三流」と揶揄されたこともありましたが、そうはいっても先人のつくった政治システムは当時まだ盤石であり、経済を失速させるほどの重荷にはなりませんでした。そのシステムもついに綻びが見え隠れしていたところに、アベノミクスが登場し、株価も大きく上昇したと俯瞰することができるのです。この「政治」は株式市場の「テーマ」として見るにはやや長期的過ぎるため、ややもすると見落としがちですが、大きな相場の流れを見極めるうえでは非常に重要であることがわかっていただけるでしょう。

もちろん、政治への評価は見方によって大きく異なるのは当然です。ですが、例えばリーマンショックや超円高、東日本大震災、尖閣問題などの突発的要因を株価迷走の原因に挙げる方は少なくないですが、それを「ボヤ」段階で消し止めるのか、「全焼・延焼」までさせてしまうのか、が政治の手腕であることに異論はないでしょう。実はこういった突発事象は多かれ少なかれ常に起こっており、それに気づかずに済んでいる場合は、それだけ政治がうまく機能していることの証左なのです。市場というものは冷徹なリアリストの集合体です。理念・理想がどれだけ崇高でも、どれだけ希望的な観測があっても、現実的な舵取りがどうかを常に見定めています(その逆も然り)。たからこそ、市場は効率的で先見性を持つのです。例えば、2012年の尖閣諸島国有化を契機とした中国での反日デモ。暴徒も現れるなど過去最大のデモとなりましたが、直接被害を受けた一部の企業を除き、株価には大きな反応がありませんでした。市場はこのデモを短期的と見切っていたように思えます。

では2014年はどうでしょうか。やや低下気味とはいえ、これまでのところ安倍政権は比較的高い支持率を維持しています。議会運営も与党の安定多数で支えられており、一見死角はないように思えます。しかし、誰もが問題ないと思った事象は既に株価に織り込まれていることが普通であり、そこから先はむしろ不安要因リスクを織り込み始めるのが常です。現在は順風に見える政治についても、そういった視点は欠かせないことを自戒をもって肝に銘じておきましょう。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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