第47回 海外での就職を目指す大学卒業生 【北京駐在員事務所から】

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第47回 海外での就職を目指す大学卒業生 【北京駐在員事務所から】

中国では、2000年以降私立大学の設立が急増し、大学進学率が急上昇しました。大学新卒者は、10年前の2004年が280万人であったのに対し、今年2014年は727万人に達する見込みです。10年間で2.6倍になりました。
一昨年2012年の日本の大学卒業生が55万人ですので、727万人は約13倍となります。

大卒者の数が急増しているため、当然ながら就職を巡る競争も大変なものになっています。
事務系の公務員は大変な人気で、採用試験は全国規模の一大イベントです。条件の良い仕事を得られない大卒者は、北京など大都市の近郊で共同生活(ルームシェア)をしながら肉体労働等の低賃金の職を農民工(農村部からの出稼ぎ労働者)と奪い合っています。
このような若者を指す「蟻族」という言葉もすっかり有名になりました。
就職の厳しさが増す中、海外で職を求める者も増えており、一部の大学はこれを積極的に支援しています。
東部山東省の外国語大学は、学生の海外での就職を後押ししており、卒業前の最後の学期を、海外でのインターンや就職活動に充てることを認めています。同大学の昨年の卒業生は約3,000名で、うち100名ほどが海外で営業職、教職あるいはホテル従業員等の職を得たそうです。
国別ではシンガポール、日本、アラブ首長国連邦(UAE)などが多くなっています。
中国での大卒初任給が月額3,000~4,000元(約5~7万円)程度なのに対し、これらの国で就職した場合の初任給は10,000元(約17万円)ほどになりますので、処遇も魅力的と言えます。
同大学では学生のサポートのため、労働ビザの取得代行や航空券の手配等の旅行代理店業務のライセンスを取得したほか、外国企業が学生に求める能力にあわせてカリキュラムの見直しも進めています。

山東省は以前から海外への労働者の供給基地となっており、これまでは建設業や加工産業などブルーカラーの労働者が中心でした。しかしながら、これらの職種では中国国内での賃金上昇により、処遇面での魅力が低下していることから、海外に出る労働者は減少傾向にあるそうです。
代わって、近年大学新卒者が主にサービス業に就職するケースが増えています。大学の就職担当者は、「海外で職を得る学生が増加することは、国内の就職活動の競争緩和につながり、また学生自身も良い経験を得て自身の能力を高めることが出来るのでいいことづくめ」と話しています。

特にアジア、アフリカや中南米の発展途上国では、中国との経済的な関係が強まっているため、中国語教師、看護師、エンジニアや旅行・小売業界での営業要員などの需要が高まっているそうです。
また、シンガポールでは、優秀な人材の海外への流出と人口の急速な高齢化により、中国人の若者の就業機会が増加しており、華人のコミュニティが強固で労働ビザの取得も比較的容易なため、学生には人気の就職先となっています。
もちろん、一部の国では治安や生活環境の問題から、求人を行っても十分な数の応募がない等の事例もありますが、専門家は、長期的な傾向として国境を越えた人材の流動化はますます進み、海外で職を得る中国人学生は増加して行くと述べています。

多くの学生が、その能力を発揮できる職を得て、海外での経験を中国国内にフィードバックし、中国のさらなる発展に貢献することを願いたく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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