第48回 北京を訪問する外国人が急減 【北京駐在員事務所から】

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第48回 北京を訪問する外国人が急減 【北京駐在員事務所から】

北京市当局(旅遊発展委員会)の発表によると、昨年1~11月の間に北京を訪問した外国人は420万人と、前年同期間から△10.3%の大幅減となりました。
北京への訪問者は、2002年から翌年にかけての新型肺炎(SARS)の流行により急減した後は順調に増加し、2011年には520万人に、また12年も501万人に上りましたが、昨年はどうやら500万人に達しなかったようです。

旅遊発展委員会は、訪問者の減少の要因として、弱含み傾向の世界経済、人民元高と大気汚染問題を挙げています。
北京市では、昨年1月より、北京空港での乗継で中国に入国、出国する外国人(対象は米国など45ヵ国)向けに、最長72時間のビザ無し滞在を認め、初年度の昨年一年間で2万人の利用を見込んでいました。
ところが、こちらも実績は14,000人程度に留まっており、所期の目標を達成出来ていません。

中国全体でも、昨年1~11月の外国人訪問者は前年同期比で2.4%減少しているそうで、北京市だけの問題ではないのですが、さすがに北京の2ケタの減少は目立ちます。
観光業界の関係者は、中国全体の問題として、訪問者の多い日本、韓国、ロシア、米国などからの観光客が、タイ、インドネシア、マレーシアなど東南アジア諸国に流れていると指摘しています。
専門家は、これらの国々は、観光客の誘致に多額の予算を投じており、中国は外国人観光客の獲得に向けた取組みという点で熱意を欠いていると述べています。
例えば、「中国のハワイ」と言われるビーチリゾートである南部海南省の海南島は、以前はロシア人観光客でにぎわっていたのですが、最近では国内各地からの観光客に押され、ロシア人はタイに向かっているそうです。

大幅な落ち込みを記録した北京市では、いち早く対策に乗り出しており、まずは旅行代理店に外国人訪問客向けの魅力的な商品を提供するよう促すとしています。
中国の経済発展と人民元高により、海外旅行ブームが起きていること、また中国人は一般的に一週間程度以上の長めの旅行を好むことから、旅行代理店は「儲かる商品」ということで中国人向けの海外ツアーの販売に注力する傾向があります。
旅遊発展委員会は、北京市への短期訪問客向けに、代理店、航空会社、空港等の関係者が協力して商品を開発する必要があるとし、昨年夏に会議体を発足させましたが、これまでのところ成果は挙がっていないそうです。
また、「市中心部に免税店を開設」との案もあるそうですが、今のところ実現には至っていません。

結局のところ、「航空運賃をどの程度安くできるかがポイント」との意見もあり、この点現在の人民元高の状況は逆風となっています。

大気汚染問題が北京市のイメージを悪化させていることも確かで、旅行業に関する研究機関である中国旅遊研究院の教授は、「訪問者を引きつけるためには、国のイメージアップや観光資源への投資など、長期的な戦略が必要」と述べています。
小手先の対策では用をなさず、北京市ではます大気汚染や交通渋滞の緩和に取り組むべきとの指摘です。

訪問者は減少しているとのことですが、ホテルの宿泊料金、駐在員向けマンションの家賃や外国企業が多く入居するオフィスビルの賃料は今でも上昇傾向だそうです。
北京市だけをとっても、なかなか一面では全貌を捉えきれないのでしょう。日本からの観光客は、一昨年の反日デモ以来回復が見られませんが、何とか状況が好転し、往来が活発になることを願いたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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