第19回 新興国を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第19回 新興国を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。新年が始まって早くも2週間が過ぎてしまいました。とはいえ、飽食(!?)の正月休みから、ようやく通常の生活リズムに戻ってきたところという方も少なくないのではないでしょうか。さて、相場の方はやや厳しめのスタートとなりましたが、毎年囁かれる相場格言「節分天井彼岸底」が注目される時期にもなってきました。本年は4月に消費税増税もあるため、この相場格言の重みは例年以上となる可能性があると考えています。

そういった中、今回は「新興国」というテーマを取り上げてみましょう。新興国が相場のテーマとなったのは、2000年代央からでしょうか。発端は2001年に「BRICs」という言葉が紹介されたところから始まり、その後の資源株相場と歩調を並べて囃し立てられたことを覚えておられる方も多いでしょう。さらに、2008年のリーマンショック以降は、先進国が軒並み傷を受ける中、世界経済の牽引役としても大きく注目されました。当時は長期化する日本経済の不振もあり、新興国関連株や当該国株への直接投資も一気に人気化するに至りました。

しかし、直近はかなり風向きが異なります。先進国株は新興国株をアウトパフォームし始め、新興国で利益を稼いできた新興国関連株もかつての勢いを失くしつつあります。これは何故でしょうか。理由は大きく2つあります。一つは、日本株が復活してきたこと、です。いくら新興国の経済成長が大きいとしても、勝手知ったる自国の投資環境が改善してくれば、投資家はそちらを指向するのが当然でしょう。為替リスクもありませんし、日々の状況も日本語でタイムリーに入手することも可能だからです。米国景気の改善で、新興国から投資マネーが減少するという報道をよく見かけますが、これはまさに米国でそういった状況が起こっていることを示しています。

もう一つの理由は、新興国自身の景気問題です。確かにこれまでは高成長でしたし、今後も潜在成長率が高いということに異論はないでしょう。しかし、これはその期待値もまた株価に織り込まれているということでもあるはずです。その期待を上回る成長があってこそ、株価はさらに上昇するわけですが、逆に如何に成長率が高くともそれが期待以下であると、当然株価は伸び悩むことになります。実際、新興国経済は、これまでの急成長の反動もあり、実は徐々にその成長率が低下し始めています。その原因は、為替レートであったり、インフレなどであったりと様々ではあるものの、概して新興国が発展する過程では不可避な諸問題に直面してのことと位置づけられます。例えば、今や世界第二位の経済規模まで躍進した中国では、人件費の上昇、PM2.5に代表される公害問題、国内所得格差の拡大、など今や解決すべき国内問題は相当に積み上がっていると言えるでしょう。かつて先進国の不調を見事にカバーした新興国経済はその存在感を明らかに低下させつつあるのです。新興国への興味は、分散投資の対象という長期的な視点を除くと、一旦一巡してしまったと見ざるを得ないと考えます。

しかし、では国内株への期待はどんどん膨らむ一方かと言えば、それもまた違うでしょう。電力などエネルギーコストの上昇は日本の潜在成長率力の阻害要因となるでしょうし、なんといっても人口減少という構造問題も重石となります。アベノミクスはあれど、この悪条件を解決する糸口はまだ見えていません。また、今は急成長の反動に直面する新興国も、それらを克服して「成熟国」へ移行してくれば、また投資機会が広がってくるはずです。どこかで再び新興国株、新興国関連株がテーマとして浮上してくる可能性は非常に大きいと考えます。ただし、その時には「新興国」ではなく、「新成熟国?」など別の違う呼称へと変化しているかもしれませんし、新興国の呼称のままでも、その構成は現在我々が考えている国々とは違うラインナップへと変化しているのではないか、と想像しています。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧