第96回 NZドルの上昇トレンドはまだ続くのか?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第96回 NZドルの上昇トレンドはまだ続くのか?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ひょっとするとドル/円相場は100円台でのレンジ相場に入ってしまったのかもしれません。今年1月2日に着けた105.44円の高値がなかなか抜けずにいますが、短期的に天井を付けた可能性が出てきた場合、トレンドを形成した日柄と同様程度の揉み合いをこなさないと次のトレンドが生まれないという考え方があります。となると、昨年レンジブレイクして年末に向けて円安ドル高の大きなトレンドとなりましたが、そのトレンドが形成された日数である1ヶ月から1カ月半くらいの日柄を休息、レンジ相場とすることでエネルギーを充電するのかもしれませんね。

大発会で大きく下落してスタートした2014年。1月10日に発表されたアメリカの雇用統計の数字が予想を裏切る悪化だったことで波乱は続きます。2014年のドル/円相場は1ドル110~120円前後まで進むという円安予想が大勢ではありますが、今年2日の欧米市場でつけた105.44円が今年の高値となり、90円割れまで一旦円高が進む可能性を指摘したレポートなども話題となっており、難しい相場に入ってきました。

ドル/円相場は過去2回のコラムでも書きましたように「国策に逆らうな」で基本戦略はドル買い、円売りの押し目買いで行くつもりですが、それでも相場ですから、常にトレンドがあるわけではありません。レンジ相場に入ることもあります。レンジ入りしてしまったら休むも相場です。高値で売って安値で買い戻すというデイトレやスィングトレードで利益を得るという方もいるかと思いますが、やはりトレンドに乗るトレードの方が解りやすく、労力も少なくて済みます。仮にドル/円がレンジ入りしてしまったら、他の値動きのある通貨ペアに注目してみるのも面白いでしょう。

例えばNZドル相場。ドル/円相場よりもさらに強い相場が続いています。
NZ円はリーマンショック後に44円まで売り込まれたのですが、今年1月14日には87円まで上昇しています。アベノミクスによる円安に加えて、NZには利上げ予想が広がっており、将来の金利上昇の思惑がNZドル上昇に繋がっているのです。

NZでは2011年にクライストチャーチで地震がありました。この地震の復興需要を見込んだ投資が過熱し、住宅価格は上昇の一途をたどっています。NZ国内の住宅価格は2011年7月から13年11月まで29カ月連続で前年比を上回っています。NZの中央銀行にあたるRBNZは金融政策決定時の声明文でも毎回住宅価格の上昇に懸念を表明しており、過熱する住宅バブルを鎮静化させるため、いつ利上げ(金融引き締め)が行われてもおかしくありません。このため利上げの可能性を見込んだNZの買いが旺盛で、NZ円も上昇を続けているのです。昨年10月から住宅融資規制が実施されていますが、その効果が小さければNZは利上げに踏み切らざるを得ないでしょう。昨日1月20日に発表された住宅価格は融資規制の効果があったのか、前年比で1%の下落となっていますが。

では、NZはここからも、利上げを見込んだ買いが正解でしょうか?

昨年10月、大手格付け会社ムーディーズNZ国債の格付けの引き下げを検討したとの報道がありました。最終的に格下げは逃れていますが、ムーディーズは最上格の「トリプルA」の格付け保有国のなかでNZは国際収支の赤字額が最も大きいと指摘しています。NZは住宅価格がバブル化している一方で、一般物価はインフレとはなっていないばかりか赤字国であるのが実情。実体経済には力強さがないのに、地震という特殊事情がきっかけとなり不動産価格が上昇してしまっているのです。利上げはできれば避けたいのが本音なのです。

こうした中、市場ではNZドルはどんどん上昇を続け、14年にも政策金利が引き上げられる可能性を織りこんでいます。まだ利上げをしていないのに、です。

RBNZは為替と金利を両睨みで政策運営をしなくてはならず、利上げ期待でNZドルが上昇を続けるようだと利上げが出来ない可能性もあります。しかし、NZドルが下落基調に入れば早期利上げに踏み切るでしょう。重要なのは、思惑だけで既にNZドルが歴史的高水準にまで上昇してしまっていること。ここから先は「利上げ思惑=NZドル買い」といった解りやすい相場とはなりにくくなるものと思います。

NZドル/円相場はまだまだ上昇トレンドの中にあります。しかし、利上げ思惑で買われてきた相場ですので、利上げがあれば材料出尽くしで売られる可能性もゼロではありません。トレンドが続くうちは押し目買いで買戦略を継続し、チャートが崩れて来たと見れば、逆にピークアウトの可能性から戻り売り戦略に。利上げのタイミングがNZドルの今後を左右することでしょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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