第50回 年越しの爆竹は是か非か? 【北京駐在員事務所から】

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第50回 年越しの爆竹は是か非か? 【北京駐在員事務所から】

年越しの風景と言えば、日本では静寂の中に響く「除夜の鐘」が思い浮かびますが、中国では対照的に轟音と閃光を伴う爆竹が欠かせないものになっています。

爆竹は、その音に「魔除け」の効用があるとされ、古くから人々に用いられてきました。
そもそもは、爆「竹」の文字通り、春節に山から人里に降りてきた魔物を退治するため、家々で竹を燃やし、竹がはぜるパチパチという音に驚いた魔物が山に逃げ帰ったと言い伝えられています。
中世以後には火薬を用いた爆竹が広まり、より大きな音を発することから愛用され、発展しました。
明代から清の時代になると、魔除けのほかに、日本のお盆の迎え火のように神を迎えるために用いられるようになり、さらには結婚式や商店の新規開業など、お祝い事に欠かせないものとなりました。
春節(今年は1月31日)の午前零時に、人々が一斉に爆竹を鳴らし、新年を祝うのですが、毎年火災や事故による負傷者(時には死者も)が発生し問題となっています。

爆竹の危険性に加え、近年都市部ではその騒音が問題視され、さらには煙が大気汚染を誘発するとして使用が制限される方向にあります。
春節が間近に迫り、ネット上では爆竹の使用について熱い議論が展開されているそうです。
「爆竹で空気を汚しておきながら政府に大気汚染対策を求めるなんて身勝手すぎる」との声がある一方、「年越しや結婚式などお祝いの機会に爆竹は欠かせない」あるいは「爆竹を規制するよりも工場を一つ閉鎖する方がよほど効果的」といった意見もあり、人々の考えが様々であることが分かります。
ある調査では、春節期間中の爆竹の使用禁止に、回答者の6割が賛成、4割が反対だったそうです。

各都市の政府当局は、爆竹による大気汚染や騒音を懸念しつつも、「春節には爆竹」という市民の声も無視できないとして、一方的な禁止ではなく、使用の抑制あるいは自粛を呼びかけています。
北京市の担当者は、「大気汚染が深刻な北京で爆竹を使うことは、傷口に塩を塗るようなもの。煙が少ない環境に優しい製品か、いっそ花など爆竹以外のもので新年を祝って欲しい」と述べています。

爆竹の光と音で賑やかに新年を迎えたい市民からは嘆きの声も聞かれますが、大気汚染への懸念も根強く、北京では年々爆竹の販売量が減っているそうです。
新聞記事によると、市全体で一昨年は81万箱、昨年は71万箱の爆竹が販売されましたが、今年は51万箱にまで減少し、販売店の数も昨年から13%減少しているそうです。
販売店の従業員は、「昔は皆大量に購入していたが、最近は一箱かせいぜい二箱で、100元(約1,700円)くらいしか買ってくれない」とこぼしていました。
爆竹製造会社の担当者も「煙やごみの発生を減らした新製品を投入しているが、売れ行き低迷でとても新年を祝う気分になれない」と話しています。

北京市では、とりあえず爆竹の使用禁止とはしないものの、大気汚染の度合によっては、直ちに禁止令を出すとしています。
将来的には、個人での爆竹の使用は全面的に禁止され、ちょうど日本の花火大会のような、当局主催の「爆竹打ち上げ大会」に市民が集まり新年を祝うようになるのではとの予想も聞かれます。
古くからの伝統が都市化により存亡の危機に瀕するという事態は悲しいものですが、何とか皆の意見が折り合い、楽しく新年を祝えるようになって欲しいものです。

私は、昨年は春節前日から日本に戻りましたため、北京の年越しの様子は見ることが出来なかったのですが、今年はこちらにおりますので、さてどのようになるのかじっくり観察するつもりです。
何よりも、大気汚染が酷くならないことを願いたく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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