第20回 スマートフォン(スマホ)を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第20回 スマートフォン(スマホ)を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。前回、「節分天井彼岸底」を前ふりに、そして「新興国」をテーマにしたところ、期せずして株式市場とマッチすることとなってしまいました。いつも相場動向を考えながら前ふりやテーマを考えているのですが、ネタのタイミングは読者の方がゆっくり考える時間を持てるように、実はちょっと早めか、あるいはちょっと遅めになるように考えています。前回はその「ちょっと早め」のネタを想定していたのですが、結果的にはタイミングがドンピシャとなりました。どうも筆者の相場感覚よりも市場は速く動いている印象です。今後は、少し時間軸を修正して考える必要があるかもしれません。みなさまの投資戦略の参考になるかどうかわかりませんが、こういった感触を持つ市場関係者が居るということを少し気に留めていただければ幸いです。

さて、今回は「スマートフォン(スマホ)」をテーマに取り上げてみたいと思います。先ほどの例でいえば、こちらは「ちょっと遅め」でもあり、「ちょっと早め」を意識したテーマです。スマートフォンが世に出たのは2007年。誰もが知っているアップル社の「iPhone」がその第一号となります。オーディオプレーヤー、電話、ネット接続可能な情報端末といった機能を併せ持ち、かつボタンを極力排除した革新的なタッチパネルを武器に一躍世界的なブームとなりました。そ の後は、アップル社とは異なるOS(基本ソフト)を搭載したスマートフォンも加わり、スマホは一気に携帯電話の主流機にまで登りつめました。現在、数多くの国でスマホの普及率は50%を超えており、UAEや韓国、サウジアラビア、シンガポールにおいては、販売開始からわずか6~7年で普及率が70%を超えています。日本のスマホ普及率は世界的にも特異と言える30%弱といった水準にとどまっていますが、これは独自の進化を遂げた従来型携帯電話(ガラケー)があまりに高性能であったための特殊事情と考えるべきでしょう。株式市場も、このスマホの世界的躍進を囃し、端末メーカー、部品メーカー、さらにはその部材メーカーも大きく注目されたことは記憶に新しいところです。

しかし、ここにきてかなり風向きに変化がでてきています。第一に、スマホは依然として世界の主力ではあるものの、相当に普及が進んだことで今後の成長ピッチはかつてほどのものが望めなくなりました。潜在的な伸び代が縮小し始めたと云ってもよいかもしれません。第二 には、スマホは不要と考えるユーザーの掘り起しのために廉価板の投入が始まったことです。当然、これは価格競争を激化させ採算を低下させるリスクがあり、その影響は部品メーカー、部材メーカーにまで波及する懸念が台頭することになります。もちろん、スマホメーカーは差別化を図ることなどで付加価値維持に注力するのでしょうが、やはりそれは「攻め」から「防戦」へとシフトした印象が拭えません。一世を風靡した「スマホ関連銘柄」も、かつてと同じ目線では捉えられなくなっているようになってきたと言えるのです。このことは、月並みですが「スマホ関連銘柄」の中での選別が進む、ということとなるはずです。

しかし、興味深いことに「勝ち組」の銘柄選択はそれほど容易ではないのです。通常、評価される「勝ち組」銘柄は衆目の一致するところであり、相当の事がない限り、この評価が短期間に変化することはありません。ところが、最先端の技術の集合体でもあるスマホ関連では、技術力次第でアッと言う間に「勝ち組」が入れ替わってしまうことが頻繁にあり得るのです。これは正に劇的なほどです。「スマホ関連」というだけでなんでも持て囃される時代は終わったものの、「勝ち組」が度々入れ替わるという視点では依然として株式相場の注目を集め続ける可能性は非常に大きいと考えます。このテーマでは、銘柄選択の巧遅が短期間でダイレクトにリターンに反映されることになります。証券アナリストとしては、その分、銘柄研究意欲を実に掻き立てられるテーマでもあるのです。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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