第52回 赤ワインの人気が急上昇中 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第52回 赤ワインの人気が急上昇中 【北京駐在員事務所から】

中国人のお酒の嗜好が近年急速に変化しています。伝統的な中国酒の消費が減少し、代わってワイン、特に赤ワインの人気がうなぎ昇りです。
統計によれば、ワインの消費量世界一は米国で、中国は第五位ですが、赤ワインに限れば、中国がフランス、イタリアを抜いて世界一の消費大国になっているそうです。

日本では、中国酒と言えば「紹興酒」に代表される醸造酒「黄酒」が有名です。黄酒を長期熟成させたものが「老酒」になります。
これらは上海市を中心とした、主に中国中部で良く飲まれるお酒ですが、全国的には透明な蒸留酒「白酒」が最も普及しており、多くの人々に愛飲されています。
白酒はウォッカ、テキーラあるいはジンと同様、アルコール度数が極めて高く、これをショットグラスのような小さ目の杯であおるように一気飲みします。
まさに「乾杯」でグラスの酒を飲み干すというわけです。
宴会の出席者全員で酒を注ぎ合い、乾杯を繰り返しますので、お酒に弱い人は大変です。白酒に不慣れな日本人が、中国での宴会で記憶を失くした等の話は枚挙に暇がありません。

白酒の代表的な銘柄に「茅台酒」があります。中国の「国酒」と呼ばれ、国賓を招いての晩餐会等の席で乾杯に用いられる高級酒ですが、市場に出回っている茅台酒の8割は偽物とも言われており、いかにも中国らしい話です。
茅台酒を初めとする高級白酒は、政府機関などでの宴会には欠かせないものですが、習近平政権が共産党及び政府関係者の汚職一掃を打ち出す中で、華美な宴会や贈答の禁止が行われたため、需要が激減し、市場価格も急落したそうです。
もちろん、白酒の中にはより安価な普及品もあり、一般庶民の楽しみになっています。

中国酒から赤ワインへの需要シフトの要因については、共産党や政府の宴会及び贈答の自粛に加え、赤ワインが健康に良いとの評価や、赤色を好む中国の文化が挙げられています。
また、若者の間では、ワインが持つ都会的で洗練されたイメージが人気の源となっています。
中国で消費される赤ワインの8割は国内産だそうですが、近年は世界各国からの輸入も急増しており、店頭には欧州諸国や米国、南米、オーストラリアや南アフリカ等からの輸入品が並べられています。
昨年1~10月の10ヶ月間に輸入された赤ワインは、前年同期に比べ、数量ベースで31.4%、また金額ベースでは68.2%、それぞれ増加したそうです。
また、レストランでは、充実したワインリストを有することが、顧客獲得のための重要なポイントになっているそうで、フランス料理店を筆頭に、中国料理店でも幅広い品揃えを売りにするところが増えています。一本数万元(数十万円)の品も目にする機会が多く、富裕層の消費意欲の高さがうかがえます。

旺盛な中国のワイン需要は、輸入量の増加にとどまらず、有名な産地であるフランス、ボルドー地区でのシャトー(ワイナリー)買収につながっています。
昨年、中国人あるいは中国資本が買収したボルドーのシャトーは50ヶ所に上るそうです。
フランスやイタリアではワインの消費量が減少しており、中国の消費増については歓迎する声が専らだそうですが、今後中国による買収がさらに進めば、文化摩擦等に発展することも懸念されます。

中国の赤ワイン人気は、バブル期の日本でのブームに重なって見えます。日本では、その後年月を経て日常的にワインを楽しむ文化が定着したように思われます。
中国でも、いずれワインが一層普及し、多くの人々に飲まれるようになるのでしょうか?
中国酒メーカーの巻き返しとあわせ、注目したく思います。

=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧