第21回 相場のテーマを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第21回 相場のテーマを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。オリンピックも佳境を迎えてきましたが、相場そっちのけで思わず応援する日々が続いています(笑)。メダル獲得を願うのはもちろんですが、それ以上に選手の方々にとって悔いのない演技・レースができるよう応援しています。頑張れ、ニッポン!です。一方、相場は大荒れの様相となってきました。新興国の金融不安はかなりキナ臭い印象が拭えません。4月には国内でもついに消費税率が上がります。順風満帆に見えた年末の相場でしたが、明らかに風の温度は一旦冷え込みつつあります。当面は慎重な投資スタンスが重要になるでしょう。「節分天井彼岸底」の相場格言は今年も機能する可能性が高まってきたように思えます。

さて、今回は「エコカー」をテーマに取り上げてみたいと思います。ハイブリッド車(HV、PEV)や電気自動車(EV)などが株式市場で大きな話題を集めたのは3~4年ほど前になるでしょうか。当時は地球温暖化への懸念を背景に、ガソリン車からエコカーへ世代交代の期待が急速に高まりました。これに併せ、どの自動車メーカーもエコカー開発を加速させ、逸早く技術面でのスタンダードを確保しようと凌ぎを削る競争に突入しました。エコカーに関連して、様々な二次電池関連銘柄が発掘されたのも記憶に新しいことでしょう。では、そのエコカーは今、どうなっているでしょう。

現在、エコカーが株式市場で大きなテーマとして注目されることはほとんどありません。そして、当時は「HVが時代を席巻する」、「いや、EVに一気に世代は転換する」、「いやいや、PHVこそが現実的だ」など、喧々諤々の見通しが巷に溢れたのですが、結果的にエコカーへの劇的なシフトは起こらず、当時の期待には到底至らない水準にとどまっています。確かにHVの人気は高く、引き合いは世界的にも好調ですが、そこからの広がりはまだ限定的というのが実態でしょう。あれほどのテーマだったにもかかわらず、尻すぼみになってしまっている感は否めません。これは何故なのでしょうか。今回の注目点はここです。

エコカーが(期待に対して)伸び悩んだのはいろいろ理由があります。国内ではエコカー減税によって相当の需要を先食いしてしまったこと、震災以降はEVが本当にエコなのか、停電となればどうなってしまうのか、という根源的な疑問が投げかけられたこと、世界的にはやはりコストが高くついてしまったこと、ガソリン車の燃費も飛躍的に向上していること、電気ステーションなどのインフラも足りなかったこと、などが挙げられます。他にももっとありますが、詰まるところは、理念先行であったことがその最大の要因であったように思います。二酸化炭素削減は人類の重要な命題ですが、消費者からすれば、クルマであることに変わりはありません。ガソリン車よりも高い金額を支払うというのはなかなか難しいのが実状でしょう。エコカーは消費者に性能など現実面で明確なメリットを担保できなかったために、(理念は別として)現実には支持をそれほど受けることがなかったという見方ができると思います。

これは、比較的短期に従来品を駆逐して世代交代を果たしたCD(従来品はレコード)、液晶TV(従来品はブラウン管)と決定的に異なります。CDも液晶TVも、性能面では明らかに従来品を凌駕していました。理念よりも何よりも、消費者はそこから実際にメリットを体感できたからこそ、世代交代が進展したのです。エコカーはまだその域に達していません。現時点で健闘しているのがHVのみというのも、従来の延長線上でガソリン代が節約されるというメリットが貢献しているからとも言えるでしょう。かつてこのコラムでは「テーマを考えるうえで重要なのは、それによってモノの流れがどう変わるのか、誰がそれを喜ぶのか、だ」と指摘しました。エコカーをこの指摘と比較すればどうでしょうか。やはり消費者に現実的なメリットがないというのは、なかなか浸透し難いものである現実がうかがえます。このことは、今後もテーマ株を見る時の非常に重要な教訓でもあります。次回、大きなテーマが株式市場で話題となったときには、この教訓をぜひとも活かしたいものです。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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