第99回 ドル/円、日本株の調整どこまで?!下落要因の検証から今後を展望 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第99回 ドル/円、日本株の調整どこまで?!下落要因の検証から今後を展望 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

日経平均は2014年に入ってからは下落基調が続き、2013年大納会につけた高値から14%強も下落していますが、ドル/円相場は下落基調にはあるものの1月2日につけた105.45円からはわずか4%強の下落に留まっています。日経平均が下げすぎなのか、あるいはドル/円相場の調整が足りないということなのか。見方が分かれています。

1月に入ってからの下落の要因を考察してみましょう。下落が長引くかどうかはその材料が長期化するか否かにかかってきます。1月から下落基調に転じたのは日本株、ドルだけではなく、米株も同様に大きく調整を強いられました。

【テーパリングの影響による新興国不安?!】

アメリカが昨年12月のFOMCで、量的緩和の縮小を開始することを発表した直後はマーケットの混乱はありませんでしたが、1月に入ってからアルゼンチンの通貨ペソが急落したところから、テーパリングの影響を懸念する見方が広がりました。アメリカが量的緩和策でばらまいてきた資金が回収されれば、やはり世界経済に悪影響となるやもしれぬという懸念が思いのほか世界の株価を下落させたのです。これによりドル/円も大きく下落しました。

しかし、その後新興国各国による主要政策金利の引き上げなどのよる通貨安防衛策が功を奏し、新興国通貨下落は沈静化。そもそもテーパリングの可能性から引き起こされた新興国からの資金回収は昨年から始まっており今になって急に出てきたリスクではありません。この問題が長期化するほど緩和マネーが未だに新興国に滞留していることは考えにくく、これは高かった米株が調整されるための体の良い材料とされたに過ぎないと思われます。

【米国経済指標の悪化】

1月の雇用統計に続き、2月分の雇用統計も予想を大きく下回る結果となったほか、小売売上高などアメリカの景気回復を占う指標に停滞ムードが漂い始めました。今年は歴史的大寒波がアメリカを襲ったことが原因とされており、指標悪化をきっかけに瞬間大きく米株やドル/円が売り込まれる瞬間もあるものの、結果的には買い戻されて上昇して終わっています。恐らく市場は寒波による一時的停滞が原因であるため暖かくなって来れば、その反動で思わぬいい数字が出る可能性を織り込み始めたものと見られます。となれば、米国サイドからの悪材料はほぼ出尽くしたと考える局面です。

【アベノミクスへの疑問】

この1月最も下落したのが日本株でした。気がかりなのが外国人投資家の日本株買いがピタリと止まってしまっていること。1月のダボス会議で安倍首相が基調講演で「法人税減税」について発言した際も、相場が動くことはありませんでした。昨年までの「安倍トレード」では安倍首相が法人税減税という言葉を発すればアルゴリズムによる日本株買い、ドル/円外が瞬時に入って大きく動いた地合いとは一転してしまったようです。消費税増税が4月から始まりますが、現在のところ4月を前に日銀が追加緩和に動く期待も低く(日本の消費者物価指数は上昇を始めていることから必要がないという指摘も)第3の矢と言われた成長戦略も期待外れに終わっていることから、外国人が安倍トレードへの関心を失ってしまったという声も聞かれます。ジョージ・ソロスが日本株を売っているというような噂が市場を駆け巡り、1月31日にはアジアや日本株中心に投資していたヘッジファンドが閉鎖するなどのニュースが嫌気されました。ダボスでは日中の戦争リスクが高まっているというような見方が一部に広がったことから、外国人投資家らからはリスクと捉えられているという話も聞こえてきます。

【需給構造の変化がドル/円の下値をサポート】

米株、ダウ平均は1月の大きな調整から半値以上も戻し、ナスダック指数は再度高値を更新してきました。日本株はようやく38.2%戻しの水準で頭が重い印象です。日本株が調整完了となり上昇基調に回帰することが再度ドル/円が上昇する重要なポイントです。ドル/円相場が日経平均ほどに下げない理由は決してポジティブな材料ではありません。日本の貿易赤字は拡大の一途を辿っています。長引く円高局面で輸出企業は生産拠点を海外に移した途端の円安時代突入で、構造的に円安が収益拡大となる企業ばかりではなくなってしまったということが、円高圧力を薄めてしまっているのです。恐らくドル/円相場は短期的な投機筋の売買で90円近くまで下落する局面も年内には可能性としては残されていますが、需給構造がそれ以上の円高を赦さないところまで変化してしまったと見るべきです。つまり、1月の日経平均とドル/円の下落幅に温度差がみられるのは、需給による円安要因が強力なためにドル/円の下落が緩和的であったということでしょう。実は決して歓迎できる状況ではないのかもしれませんが。

【外国人投資家はいつ戻ってくるのか?!】

ドル/円の下値は限定的な中で、上値が重いのは株価が思いのほか弱いためです。ここからのドル/円上昇の材料には株価の上昇が必須。業績相場が一巡した今、一層の上昇の材料は日銀の追加緩和か、あるいは日中首脳会談が開催されるなど、政治的な緊張の緩和が安倍トレード見直しのきっかけになる可能性を指摘する向きもあり、これらが現実的であるのは3~4月頃ではないでしょうか。それまえは、神経質な相場展開となりレンジ相場が形成されそうです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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