第102回 ドル円動向を読む上でチェックしておきたい先行指標 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第102回 ドル円動向を読む上でチェックしておきたい先行指標 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

①日経平均株価

株価が先なのか、為替が先なのか?
東京市場で株高となる日には円安を好感した買いが入った、などと解説されることがあります。海外勢は日本株を買う時に、手持ちのドルを円に換えて日本株を買いますが、日本株が上昇しても同時に為替市場で円安が進んでしまうと為替変動分は損失となってしまうため、日本株を買う際には、為替市場でヘッジの円売りポジションを構築します。こうしたオペレーションが生じることから、日本株高と円安進行は高い相関性が確認できるため、株の投資家はドル円動向を、為替の投資家は日経平均など株価インデックスの動向を同時にウォッチしています。


②貿易収支

ただし、1月の日本の貿易赤字が過去最大であったことからも確認ができるのですが、貿易で生じる為替は後に反対売買によって決済されることのない「買い切り(売り切り)の玉」であるため、日本勢の輸入勢による実需のドル買いが膨大に出れば、株式市場とは全く関係なくドル円の下値を支えることになります。特に今年4月から消費税の増税が控えているため、輸入勢が増税前に備蓄しようと輸入を増やしていたことから、1~2月にかけてのドル円相場は日経平均ほどは大きく下げませんでした。赤字が大きければ大きいほど、またこれが恒常的に続けば続くほど円安ドル高は止まらないということになります。


③米国債長期金利動向(10年物金利)

ドル円相場の日足チャートを見ると3月3日にロシアがクリミアに軍事侵攻というニュースで下落し、101.19円まで円高進行となりましたが、軍事衝突が回避されたことから一気に巻き返され、さらに良好な雇用統計の数字を受けて3月7日には103.75円まで上昇しました。この動きは米国の10年物の利回りとぴたり合致します。3日には軍事衝突を警戒し、リスク回避で安全資産の米国債が買われたことで金利が低下したのですが、その後の巻き返しで、債券市場から資金が出て株式市場へと流れたものと思われます。すると金利は上がる。債券が売られると金利高ですね。ドルの金利が上昇することで、日米金利差拡大からドル買い円売りが膨らむというわけです。リスクや景気指標に敏感な債券市場と株、為替市場は密接に絡み合っていることから、日米金利差という指標は非常にドル円の値動きとの相関が高いとみていいでしょう。直近では2.8%台にまで上昇してきました。80年代には15%もあった長期金利、長いこと下落トレンドが続き2012年7月には1.4%台にまで金利が下落しましたが、大底を打ったとみられ、昨年には3%台にまで上昇してきています。ここから米国の金利が上昇していくのかどうか、これがドル円の先行きを占い大きな指標となるでしょう。


④金など商品価格動向

昨年2013年には大手金融機関が軒並み金価格に対してネガティブ展望を披露、中には1000ドルを割り込む可能性まで指摘されていましたが、年明けから一転して上昇転換。12月31日には1200ドル割れまで下落していましたがこの3月には1350ドルまで上昇しています。ドル建て金が上がるというのは基本的にドルが安いという相関になります。今年はアメリカの景気回復が期待される年になるとして、金利上昇を予想したドル高、金安のシナリオを描いていた金融関係者が大勢でしたが、どういうわけかアメリカはテーパリング(緩和マネー縮小)に踏み切ったというのに、相対的にドルは上昇していません。ユーロが強すぎるという指摘もありますが、ドル高を見込んでいた向きには、金をはじめとした商品高は想定外の事態となっていることでしょう。

ただし、気がかりなのは金が上がるのはドル安だけが要因ではないということ。金融システム不安や地政学リスクでリスク回避的に買われるという顔も持っています。現在の金高が中国の理財商品、社債デフォルトなどのリスク、ウクライナ情勢を嫌気した逃避行動による買いがどの程度価格に織り込まれているかも見極めていくことが肝要になってきますが、昨今の値動きで気がかりなのが銅価格。産業銘柄として景気に敏感に価格が左右されやすく、為替要因に加えて需給要因も大きく値動きに寄与しています。(金は商品というより通貨の側面も併せ持つようになってきており、需給といより、ドルの値動きに敏感です)この銅価格が足元で急落しているのです。おそらく先週出てきた中国の社債のデフォルトニュースが大きく響いているものと思われますが、銅は中国が最も大きな買い手であるということですね。こうした景気に敏感に動くコモディティが急落しているということが、マーケットを先行して何かを暗示しているということもあります。


商品市場は為替や株式マーケットに比べると規模が小さいため、資金が逃げる時に真っ先に大きな動きとなって表れるのですが、さて、昨今の銅価格下落は何かを暗示する先行指標でしょうか。銅価格の急落を見ていると、まだまだ安心してドルや株を買ってリスクをとっていい局面ではないように感じています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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