第56回 大都市の生計費が上昇中 【北京駐在員事務所から】

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第56回 大都市の生計費が上昇中 【北京駐在員事務所から】

英国の経済誌エコノミストの調査部門が、世界の主要131都市を対象に、各都市での生活に要する費用を算出したランキングを発表しました。
調査方法は、各都市の食料品、衣料品、交通費、住居費、教育費等様々な商品、サービスの価格を調査、集計し、ニューヨークを100として指数化し比較するものです。
100を超えるとニューヨークよりも生計費が高く、下回ると低いことになります。また、比較のため、価格は全て米ドルに換算されます。そのため、各国の通貨ベースでの上昇、下落に加え、為替変動の影響を受けることになります。
「米ドルで生活する場合の世界の主要都市生計費比較」と言うことができます。
今回の調査では、シンガポールが130となり、最も生計費が高い都市となりました。
上位10都市とそれぞれの指数は以下の通りです。

1位 シンガポール         130

2位 パリ(フランス)        129

3位 オスロ(ノルウェー)     128

4位 チューリッヒ(スイス)    125

5位 シドニー(オーストラリア)  120

6位 カラカス(ベネズエラ)
ジュネーブ(スイス)
メルボルン(オーストラリア)
東京 いずれも   118

10位 コペンハーゲン(デンマーク) 117

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26位 ニューヨーク(米国)     100

昨年の調査では東京が1位、大阪が2位でしたので、円安が順位の変動に大きく影響していることが分かります。
そして、中国からは、上海が101で21位となり、ニューヨークよりも生計費が高い都市となりました。
深圳が39位で、中国では上海に次ぐ高コストの都市となっているほか、中国の各都市は今回の調査でいずれも順位を上げているそうです。鈍化しているとは言え、先進国に比べ高い成長率を維持しているために賃金、物価ともに上昇していることに加え、人民元が米ドルに対し強くなっていることも、ドルベースでの生計費増につながっています。

ちなみに、調査対象131都市中最も生計費が安いとされたのはムンバイ(インド)で、以下カラチ(パキスタン)、ニューデリー(インド)、ダマスカス(シリア)、カトマンズ(ネパール)と続いています。
如何に生計費が安く上がると言っても、ダマスカスは内戦激化で生存そのものが難しい状況ですから、ちょっと参考にはできません。

生計費上位の都市の多くは、欧州とオーストラリアが占めています。
通貨(ユーロおよび豪ドル)の堅調により、米ドル換算での生計費が上昇していることが分かります。
東京の生計費が高いことは世界に知れ渡っていますが、順位は今後も為替変動の影響を受けつつ高止まりとなることが予想されます。

北京での生活実感としては、輸入品以外の衣料品や交通費は安く思われ、また外食も中華料理に限れば非常に安価なのですが、食料品全般、日用品、電化製品や娯楽(観光)等は日本の価格と大差が無いように思われます。特に、昨年からの円安で、円に換算した時の割高感が強まっています。
中国の都市は、今後なおしばらくは賃金と物価の上昇が続き、順位を上げていくことでしょう。

この生計費ランキングは、調査時点での各都市の「都市力」、さらには各国の「国力」を反映していると見ることもできます。
物価の上昇で生活が困難になることは避けたいですが、一方でデフレあるいは通貨安でどんどん順位を下げていくことも好ましいものではありません。
中国は今後ますます台頭して行くことが予想されますが、東京や大阪が中長期的にどのような位置を占めることになるのか、ちょっと気がかりではあります。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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