第23回 相場のテーマを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第23回 相場のテーマを読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。大雪に見舞われたこの冬でしたが、ようやく春の風が吹き始めたように感じています。このコラムでは以前、酷暑の時は厳寒になる傾向が大との見方をご紹介したのですが、その寒さはまさに予想以上でした。待ちに待った春はすぐそこです。気分を一新して、株式市場に臨んでいきたいと思います。とはいえ、ここにきて国際情勢は急速に緊迫化してきました。これも年初に「政治」をテーマに取り上げたものですが、不透明感は相当に高まってきています。ウクライナ情勢の緊迫化は、クリミアの住民投票を受けて、さらに事態が流動化するリスクもあります。尖閣諸島をめぐる中国の動きも一向に進展がありません。当面の株式市場はこれらの行方を見ながらの神経質な展開が続くのではないか、と考えています。

さて、今回は「カジノ」をテーマに取り上げてみたいと思います。現在、カジノは国内において合法化されていませんが、これを解禁しようとする動きが活発化してきています。マカオの例でも明らかなように、カジノは今や「賭博場」というよりも「エンタテインメント・リゾート」と化しており、国内外の旅行客への訴求力は強力なものがあります。それに伴って相当規模の経済効果も期待でき、東京オリンピックの開催に間に合わせることができれば、抜群の相乗効果となるとの見方が出てきています。最近はやや神通力を失いつつあるアベノミクスも、カジノ解禁による規制緩和の実施は大きな目玉となる可能性があるでしょう。巷に流れる市場規模予測にはやや「楽観的過ぎる」印象は拭えませんが、それでも経済へのカンフル剤としては十分機能すると考えています。市場予測に解禁法案成立の先行きは予断を許しませんが、株式市場でカジノ関連銘柄が取り沙汰され始めているのはこのためです。

ただし、このコラムで考えるカジノ関連株としては、通常取り上げられるゲーム機、紙幣やコインの識別機、さらにはリゾート施設建設などではなく、もう一捻りした視点を採りたいと思います。先に触れたゲーム機や施設建設は大きな投資が見込まれるため、確かに関連企業はそのメリットを享受できるはずです。しかし、これらは初期投資段階こそその追い風を受けることができますが、一度完成してしまえば、逆にしばらくは大型投資が見込めなくなってしまいます。もちろん、維持更新需要はあるでしょうが、やはり初期投資に比べるとその規模はかなり抑制されたものとなるでしょう。下手をすると、大規模投資に対応するために能力拡充などしてしまうと、投資一巡後は過剰能力となって大幅に収益が悪化するリスクすらあります。つまり、投資対象としては、初期投資の期間限定という条件がついてしまいかねないのです。

これに対し、筆者はむしろカジノの運営の方に興味を持ちます。運営会社は、一度初期投資をしてしまえば、後は大きな投資は必要ありません。訪問客が安定してくれば、潤沢な資金フローが見込まれるため、財務はどんどん余裕が出てくると予想されます。このケースでは、投資はより長期でも耐え得るため、腰を据えた投資も可能になってくると考えます。実際、日本でも高い人気を博する有名なテーマパークでは同様の状態が起きています。

現実には、日本企業でカジノの運営ノウハウを持つところはないため、海外資本がその主役を担うことになるでしょう。しかし、その運営会社には日本企業も出資することになる可能性が非常に高いと思われます。用地の確保やインフラ整備、国内法への対応を考えれば、日本企業との合弁メリットが無視できないと考えるためです。注目すべきはそこで出資を決める企業群でしょう。どういった企業が有望かは現時点ではまだ想像もつきませんが、その分、これらに関してはまだまったく株価には織り込まれていないはずです。丹念にニュースを追い、出資企業を絞り込んでいく作業は面倒ですが、非常に興味深いとも考えます。同時にこれは、目先のハードにばかり注目せず、運営ソフトにも目を向けるべき、という好例になるのではないか、と期待しています。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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