第103回 相場の急変にどう対処する?!テールリスクへの備え 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第103回 相場の急変にどう対処する?!テールリスクへの備え 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

3月。ロシアのクリミア半島への軍事介入で急落したマーケット。ドル/円相場は3月3日に101.19円まで円高ドル安が進行したものの、本格的な軍事衝突は避けられるとの楽観から急反騰、雇用統計では寒波の影響で低く見積もられていた非農業部門雇用者数が予想より良かったことで、ドル/円相場は103.75円までの円安ドル高となっていました。しかし、雇用統計明けの週末、中国の経済指標で貿易赤字の拡大が明らかとなったことや、銅価格の急落から中国が銅を担保にした資金で理財商品に投資しているなどのニュースに一気にリスクオフ相場となったことで、ドル/円相場は再び101.20円まで円高となってしまいました。3月第1週はリスクオンで2円50銭ほど上昇し、第2週にはリスクオフで2円50銭ほどの下落と、見事な行って来い相場となったのです。

先週末に投資家さん達が集う懇親会があって多くのFXトレーダーさん達ともお話をさせていただきました。1月の相場の急変には素早くポジションを変え、2月のレンジ相場でも負けずにトレードできたという方でも、3月の相場では大きな損失となってしまったという話が多く、この3月の相場はとても難しかったと思われます。2月は下値100.77円~上値102.78円でしたからとても小幅なレンジ相場でした。レンジ相場は上値付近で売って下値付近で買い戻す、という逆張り戦略が機能します。多少騙しにあってもそもそも小動きなのですから損失も限定的です。この3月の相場は2週間で行って来いですから、レンジといえばレンジなのですが、このような大きな値動きですと、今がレンジ相場であるという認識が持てません。3月第1週の動きは2月のレンジの上値を超えて切りあがっただけ、というのが結果論ですが、通常ですとこれまでのレンジ高値を超えたらレンジブレイクで大きなトレンドが発生するとみるのが王道ですから、すっかり103円台に乗せたドル円をトレンドフォローで買った投資家が多かったのです。

雇用統計まで調子が良かった相場がトレンドにならずに急反転、この騙しに気が付くことはできなかったのでしょうか。どのようにしてこうしたリスクを避ければいいのでしょうか。

リスクの高まりを示す指標の代表的なものとしてVIX恐怖指数が挙げられます。ロシアのクリミア半島軍事介入後にウクライナ情勢はそれほど緊迫化しないとマーケット全般が反騰した際はVIX指数も13.98Pにまで下落、落ち着きを取り戻したように見えたのですが、実は3月5日を底に指数はジリジリと切りあがっていました。マーケットが上昇に転換してリスクオン相場に入ったと見えたにもかかわらずです。マーケットが平穏であればVIX指数は低位で安定推移するものですが、そうはならなかった...。VIX指数はボラティリティインデックスのことです。相場の変動幅が大きければ上昇するという特徴があります。ボラティリティが高いということは、リスクが大きいということ。これは相場が上昇であれ下落であれ同じことです。ボラティリティが高ければポジションを大きく持つとリスクも高まるということで、VIX指数が上昇すれば自動的にポジションを落とすファンド勢が多いのです。こうした市場のボラティリティの高まりは、たとえ上昇局面であっても警戒しておくべきでしょう。VIXの高まりが上昇局面であれば何か一つでもネガティブな材料に反応した時には暴力的な逆流が起こる可能性を秘めているということでもあり、VIX指数の低下が続かなかったことは大きなポジションを持つことがリスクであったということなのです。

また、様々なテクニカルインジケーターを見ておくことも重要です。雇用統計の後、ドル/円の日足の一目均衡表のチャートを見ると、雲の中から一度顔を出したものの、その日のNYの終値では高値を持続できずに再び雲の中に値を沈めていました。ろうそく足は上髭が付く典型的な上値付きの形状。一度反落する可能性を示唆していました。買いのサイン、売りのサインを確定させる時は終値を見ます。終値で明確に雲を上抜けていなければ強い買いサインとは言えません。確かに3月10日頃には雲がねじれており、このねじれをきっかけにろうそく足がここを上抜け、上昇トレンドに突入するという期待は高かったのですが、そうならなかったという事実に逆らわず、速やかに買いもポジションを落としていれば大きな下落に巻き込まれることはありませんでした。
VIX指数や様々なテクニカル指標を確認し、不安要素が取り除かれていないのであれば一度ポジションを整理し、新たな戦略を練り直すことが肝要だということを改めて思い知らされた3月上旬。ここからは今年に入ってからのドル/円の安値である100.75円を維持できるかどうかに注目でしょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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