第104回 長期政権が続いたFRB議長交代で波乱のアノマリー発動となるか? 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第104回 長期政権が続いたFRB議長交代で波乱のアノマリー発動となるか? 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

イエレン新FRB議長のデビューとなった3月のFOMC。今回は声明文から、多くのFRB理事が利上げ時期を早めにみていることが確認され、債券市場で米国債の大量売りが出て米国債10年債の利回りは2.77%に急騰。日米金利差拡大でドル/円相場も101円60銭から102円60銭まで急騰しました。いよいよ本格的なドル高トレンドとなるかと思われたのですが、、、。

量的緩和縮小が終了し、いよいよ金利の引き上げの時期がマーケットの関心事となってきましたが、今回のFOMCで一番話題となったのは「6カ月」というキーワード。イエレン氏の初のFOMCデビューの記者会見でうっかり口をすべらせた「緩和縮小終了後から利上げまでは、そうねぇ、6カ月くらいかしら」という発言が、一人歩きしてしまいました。このままFOMC毎に100億ドル量的緩和縮小が粛々と行われれば今年秋にも縮小サイクルが終了します。その半年後に利上げという計算となるわけですから2015年前半にも利上げする可能性があるとの解釈が一気に広がりました。これまでは、2015年後半との見方が大勢でしたので、半年も前倒しされてしまったのです。一方で、超低金利は継続との従来の表現も継続しているため、解りにくくなったという声も聞かれます。

ここで、気がかりなのは長期政権が続いたFRB議長が交代すると直後に波乱に見舞われてきたというアノマリー。今回はここからのマーケットを展望するのがとても難しいので、ちょっとした小ネタです(笑)

1951年~1970年まで18年もの間FRB議長を務めたウィリアム・マーチンからアーサー・バーンズにFRB議長交代となった直後の71年にニクソンショックが起こります。金本位制の廃止は、FRB議長交代の翌年に起こりました。60年代のベトナム戦争で米国は大幅な財政赤字を抱え国際収支が悪化、米国は金の準備量をはるかに超えた多額のドル紙幣の発行を余儀なくされ、金との交換を保証できなくなったため、ニクソン大統領はドルと金の交換停止を発表したのです。これにより米ドルは信用を失って大暴落に見舞われました。

ニクソンショックの洗礼を受けたアーサー・バーンズの任期は8年。引き継いだのはウィリアム・ミラー。バーンズ時代にドルが大暴落したことからインフレを招いてしまっていました。止まらないドル安にアメリカは前例にない「ドル買い介入」を実施します。あれれ?!介入というのは、外貨があるからできること。ですが、外貨を持たないアメリカはどうやって介入したのでしょう?!
米財務省は、外貨を入手するため78年11月から外貨建て米国債をドイツ、スイスで計65億ドル発行したのです。債券を発行して(借金して)ドル買い市場介入を実施。時の大統領はジミー・カーター。この債券は「カーターボンド」と呼ばれています。このウィリアム・ミラー氏の任期はたった1年5か月間でした。

短期政権に終わったミラー氏の後を継いだのがポール・ボルカー。79年から87年まで8年もの間FRB議長を務めています。そうそう、このボルカーの名前を取った「ボルカールール」この春から来年にかけてのマーケットの波乱要因となる懸念をはらんでいるのですが、その話はまた今度。ボルカー氏就任の際は、前ミラー氏が短期政権に終わっていたので波乱アノマリー発動はありませんでした。

そして、ボルカーの後を継いだのがマエストロ、グリーンスパン氏。この方が18年もの間議長を務めたことで米国の不動産バブルが起こるのですが、就任当初の87年10月ブラックマンデーという洗礼を浴びてのスタートでした。株価が25%も下落したブラックマンデーは史上最大規模の世界的株価大暴落とされ、暗黒の月曜日と呼ばれています。マエストロと呼ばれたグリーンスパン氏も、前長期政権を受けてのアノマリー発動での波乱の船出だったのです。
そして、前FRB議長バーナンキ氏も2006年から2013年1月までの長期間に渡ってQE政策で米国の危機を立て直してきました。バーナンキ氏からイエレン氏への政権交代となる2014年、アノマリー発動となるのではないか?と市場が警戒しているところに、ハト派(緩和的)と見られてマーケットに歓迎されていたイエレン氏の「6か月」発言で、ハトどころじゃないタカ派な発言に驚いたというのが、先週の米株、日本株の下落につながったのです。この余波はこの先のマーケットに影を落とすのか...?!今年は米株の急落リスクが囁かれているだけに、楽観は禁物かもしれません。となると、ドル/円の上値も重い1年となるのかも、、、。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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