第58回 中国の企業では女性が活躍 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第58回 中国の企業では女性が活躍 【北京駐在員事務所から】

英国の大手会計事務所グラント・ソントンが、世界44ヵ国の企業6,700社(うち中国企業200社)を対象に、役員あるいは管理職への女性の登用状況を調査した結果が、当地の英字紙China Dailyに掲載されていました。
中国の企業は、女性の登用で世界平均を上回っており、女性が活躍しているとの内容です。

取締役会メンバーに占める女性の割合は、世界平均が17%であったのに対し、中国では21%で、44ヵ国中9位となっています。
ちなみに1位はタイで37%、2位がフィリピンで31%、イタリアとロシアが3位で29%です。

また、管理職に占める女性の割合では、世界平均の24%に対し、中国は38%で、タイと並び6位です。1位はロシアで43%、以下インドネシアとラトビアが2位、フィリピンが4位、リトアニアが5位で、上位は中国、東南アジアと旧ソ連圏の国が占めています。
一方、44ヵ国中、女性の割合が最も小さいのは日本で9%です。次いでオランダが10%で、下位は欧州諸国、米国、インドとアラブ首長国連邦(UAE)という結果になりました。

中国の企業で女性の登用が進んでいることの理由について、グラント・ソントンの調査担当者は、急速な都市化の進行により、女性の活躍の機会(ホワイトカラーの需要)が増加したことと、一人っ子政策の結果、子育ての負担とキャリア形成への影響が比較的軽微であることを挙げています。

中国では、結婚後も夫婦共稼ぎが一般的で、子育ては施設や親の支援に頼ることが一般的です。結果、女性のキャリアの中断が避けられ、昇進にもつながるという訳です。

高等教育という点でも、男性にはブルーカラー労働者としての需要がある一方で、女性は長く働くためには自ずとホワイトカラーを目指さざるを得ないため、大学進学率が高く、優秀な学生も多いと言われています。様々な業種、企業で活躍する女性が増え、新たな採用や登用につながるという好循環が出来ています。
しかしながら、これらの女性に対する支援、特にキャリア形成や子育てとの両立への支援については、諸外国に比べ劣後しているとも指摘されています。
調査結果では、子育て中の女性にフレックスタイム制や裁量労働等柔軟な勤務を認める企業の割合が、世界全体の63%に対し、中国企業では30%にとどまっていました。
法令で義務付けられた内容を超える育児休業を許可する企業、あるいは女性がより高い役職に就けるための教育研修を行っている企業の割合も、世界平均を下回っているそうです。
女性の活躍が広がっているとはいえ、現状はまだまだ当の女性自身の努力によるところが大きいと言えます。

中国は人口が多く、大学入試や卒業後の就職の競争も激烈です。都市部では生計費も高く、住居費や子女の教育費の捻出のためには共稼ぎが必須という事情もあります。
このため、多くの女性が競争を勝ち抜くため、勉強に励み、能力を磨いて出世を目指すことになります。
一方、農村部ではまだまだ男性の労働力が求められ、結果若年層では人口の男女比のアンバランスによる男性の結婚難という問題も生じています。
広い中国、問題の構図も極めて複雑と言えます。

女性の活躍は本来望ましいものですが、中国の場合、これが都市部限定のもので、住宅価格の高騰などとあわせ、都市部と農村部の一段の経済格差拡大につながりかねないことが影を落としています。
多くの事象あるいは問題が、都市戸籍と農村戸籍の区分による人口移動の制限と、土地所有制度(都市部の土地は国有)に端を発しているように思われ、根の深いものと言わざるをえません。
将来、思わぬ形で、社会の矛盾が一挙に噴出するような事態とならぬよう、切に願いたいと思います。

=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧