第105回 ユーロ上昇どこまで?!レパトリ終了でユーロ高終焉となるか 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第105回 ユーロ上昇どこまで?!レパトリ終了でユーロ高終焉となるか 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ギリシャ危機が騒がれた2011年7月、ユーロ/ドル相場は1.2042ドルまで下落していました。この頃は、ギリシャがデフォルトするという懸念が市場を席巻、ユーロは崩壊するとばかりにユーロ売りが市場のテーマとなり、ショートポジションも過去最大水準まで膨れ上っていました。そんなムードを一変させたのが、ECB欧州中央銀行のドラギ総裁の「Believe me」発言。「信じてくれ。十分な対応となる。ユーロを守るためにはできうることはすべてする。」ドラギ総裁はこの時、南欧国債の無制限買い入れ方針を示し、ユーロは一気に買い戻されました。
この時の安値を起点としたユーロ高トレンドは月足、週足レベルで見ると未だ継続中に見えます。当初はパンパンに膨れ上がったショート(売りポジション)の買戻しで上昇したユーロも、次第に健全な上昇軌道に乗ったということなのでしょうか。

このユーロ高のもっとも合理的な解説は、ショートカバーにより一気に買い戻されたユーロ相場の回復に乗ることができなかった投資家たちのユーロ買い。2011年に1.20台だったユーロ/ドル相場は13年明けに1.37ドルまで反発したのですが、その勢いに乗り遅れた投資家は成績が劣後してしまったため、そもそもアンダーウェイト(過少保有)のユーロ資産を売ることはできない状態にありながら、そのアンダーウェイトを解消するためにユーロ買いをするしかなかったというのです。つまり、ユーロの上昇が止まらないため、投資家らは、減らしてしまっていたユーロ資産を再びポートフォリオに組み入れる行動に出たということ。ショートカバーの勢いに乗れず買い遅れた投資家らの買いは長く続く結果となりました。

また、ドイツの2013年通年の貿易黒字は1989億ユーロ(約27兆円)で、金融危機直前の2007年に記録した1953億ユーロを上回り過去最高となったこともユーロ高の一因とされています。日本が貿易黒字が大きかった時代に円高だったのと一緒です。海外で稼いだ外貨をユーロに戻す時に起きる膨大な実需は、買い切りの玉と言って、短期資金のショートが買い戻される時に起こるような反動がない為替です。反対売買が行われないということですから、毎月2兆円あまりもの資金が欧州に戻される時にユーロ買いになっていることを考えると、これが昨今のユーロ高の大きな要因であったことも間違いないでしょう。

そして、もう一つ大きな要因であったと思われるのが、レパトリエーションです。レパトリとは海外に投資していた資金を欧州に戻す資金還収のことです。
一連の金融危機の結果、欧州の金融機関は経営健全化を迫られ海外資産を整理してユーロ圏へ戻す必要に迫られました。2013年10月23日、ECBは域内銀行への資産査定 およびストレステストを含む包括的審査の詳細を発表しました。審査の対象は、ユーロ圏の主要銀行128行(域内銀行資産の85%相当)で、審査は11月から実施し、2014年10月まで1年をかけて完了させるものとしています。実際に昨年2013年11月に入ってからユーロが買われていることが値動きから伺うことができますので、このユーロ買いは10月まで緩やかに続くとも想定することはできますね。どの程度の問題が秘められていて、どの程度のユーロのレパトリが起きるかは全く予想ができませんので、ユーロ高がどこまで進むのか想定はできませんが。

しかし今年3月11日、あまり大きくは報道されなかったひとつのニュースが、足元の地合いを変えたように見えます。「イタリア銀行大手ウニクレディトは買収に絡むのれん代減損やローン関連の評価損が響き、2013年は市場予想に反し140億ユーロの赤字を発表した」というニュースですが、アナリスト予想は9億1650万ユーロの黒字でしたので、これは驚くべき赤字です。これを受けてウニクレディトの株は一時大きく売り込まれたのですが、増資の必要ことや不良債権処理部門の売却計画を発表したことを手掛かりに一時7%もの超上昇となりました。

このニュース、一見悪いニュースのように見えますが、こんな捉え方もあります。ECBが実施する健全性審査を前に、バランスシート健全化に向けた取り組みが積極的に進められている!?
ウニクレディトはユーロ圏では最大の資本を持つ金融機関です。このウニが積極的に巨額赤字を発表したことが、レパトリによるユーロ高の終焉の象徴なのではないか。欧州金融機関の膿を出し切ったということを現しているのではないか?そんな見方をする向きが出てきました。となると、これまでのユーロ高の要因の一つが消えることになります。

ユーロ/ドルは日足チャートを見るとウニの赤字発表の2日後の13日から反落しており、ユーロ高基調には歯止めがかかっています。健全性審査は今年10月までに終わらせるということですので、まだ他の金融機関にどんなリスクが潜んでいるかは解りませんが、欧州で最大の資本を持つウニの巨額の赤字が出てきたということは、すでにウニに必要な資金還収(レパトリ)は終わっていると考えることができますので、以降はあまり大きなリスクが残されていない、つまり、巨額のレパトリが起こる可能性は低いと想定することもできます。

ということで、これまでのような不可思議なユーロ高局面はそろそろ終焉を迎えたと考えることもできるのでは?!となると、いよいよ本当のドル高局面到来となりそうです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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