第59回　都市部で若年層の離婚が急増　【北京駐在員事務所から】

経済、社会の発展に伴う必然と言えましょうか、中国では年々離婚件数が増加しており、これを受け政府が対策を検討するとのニュースが、3月31日（月）付の英字紙China Dailyに掲載されていました。

2012年の離婚件数は約310万件で、2003年からの9年間で2.3倍に増加しました。2013年の合計件数はまだ発表されていませんが、中国政府民政部の担当者は、増加傾向は続いていると述べています。
特に大都市での件数増が顕著で、北京市では昨年2013年の婚姻件数164,000件に対し、離婚件数は55,000件となっています。離婚件数は2011年からの2年間で65％の急増となったそうです。
比較が難しいですが、2012年の東京都の婚姻件数は89,301件、離婚件数は25,329件となっています。婚姻件数に対する離婚件数の割合では、北京が東京を上回っていることになります。
離婚件数の増加は、上海、天津等他の大都市でも同様と見られています。
離婚の主な原因、理由としては、浮気、家庭内暴力（ＤＶ）及び夫婦間のコミュニケーション不足が挙げられています。このあたりは万国共通と言えます。

都市部で離婚件数が急増していることの背景として、離婚に関する紛争を専門に扱う弁護士は、20代及び30代の若年層での増加の影響が大きいと指摘しています。実際、調停等の依頼案件は若い夫婦からのものがほとんどだそうです。
上海市に隣接する浙江省の28歳の男性は、結婚から僅か7ヶ月で離婚に至ったそうです。
夫人とは学生時代に知り合い、3年の交際期間を経て結婚したものの、口喧嘩が絶えず、愛情が一気に冷めてしまったと話していました。
民政部の担当者も、「離婚に至る原因、理由は様々で複雑なものだが、最近の若者は行動がより衝動的になっているように思われる」と述べています。

中国の場合、不動産の所有等で有利な条件を得るために独身を装う「偽装離婚」もありますので、全てが結婚生活の破綻によるものではありませんが、それでも「簡単に結婚し、簡単に離婚する」傾向は好ましいものではないとして、政府は対策を検討しています。
一部の地方政府では、カウンセリング機関や電話相談のホットラインを設け、離婚予備軍の夫婦に再考を促しています。
民政部も、夫婦への助言を行うカウンセリングサービスの充実を検討していますが、担当者は「夫婦間の問題に干渉するつもりはないし、できない」と述べています。
加えて、女性保護団体なども、若い世代に向け、結婚あるいは家庭の重要性について教育啓蒙を行うとしています。
このような施策が、離婚を考える若い夫婦をどの程度思いとどまらせることができるのか、効果は？ですが見守りたいと思います。

中国、特に都市部での離婚件数の増加は、経済発展に伴う女性の社会進出など、欧米、日本などの諸外国と共通の要因に加え、一人っ子政策や人口の男女比のアンバランスなどの中国固有の要因による複雑な背景を有しています。
加えて、日本と同様に、そもそも結婚しない若者が増えており、結果少子化と人口の高齢化は、日本を上回るペースで進んでいます。
基本的には個人の人生観の問題ですが、中長期的には国家の成り立ちにも係る問題です。何とか離婚増に歯止めがかかり、長く添い遂げる夫婦が増えることを望みたいと思います。

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コラム執筆：長野雅彦　マネックス証券株式会社　北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員　米国CFA協会認定証券アナリスト