第25回 消費税を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第25回 消費税を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。消費税引き上げと共に、ついに新年度となりました。お仕事などで新たな環境に移られた方、あるいはご家族がそういった変化を迎えられたという方もきっと多いことでしょう。そういった方々の新天地での一層のご活躍をお祈り申し上げるとともに、大きな変化のない方々(筆者もその一人です)もまた負けぬよう頑張っていきましょう!

さて、株式市場は追加金融緩和の催促相場となってきた模様です。アベノミクスへの期待がやや腰砕け気味になる中、もう一段のカンフル剤が必要ではないか、との見方です。実際、アベノミクス第三の矢となる成長戦略は経済再生の根幹を担う部分ですが、その期待に反し、現実はまだ(期待を上回る)進捗に至っていません。第三の矢が機能するまでの空白期間を作らないためにも、そして消費税増税という逆風を吸収するためにも、第一の矢(金融政策)を間断なく打つべし、ということでしょう。金融政策は読み難い部分が多々ありますが、当面の注目ポイントは消費税増税後の景況感になると考えます。増税後の最初の統計が出てくる5月は、株式相場の大きな転換点になるかもしれません。

そういった中、今回はど真ん中のテーマとなる「消費税」を取り上げたいと思います。このテーマでは昨夏に既に書いており、そこでは電子マネーへの注目を取り上げました。その後、鉄道運賃などでは電子マネーと現金ではニ重価格が設定されるなど、電子マネーの使い勝手は予想以上に進化することとなりました。今回、再度このテーマを取り上げるのは、今度は消費税前の駆け込み需要の「反動」というものをもう一度考えてみたいと思ったためです。前回(1997年)の消費税引き上げ時にはかなりの反動減があり、その直後にデフレ不況が始まりました。今回も駆け込み需要が確かに発生したこともあり、その二の舞になるのでは、という懸念は燻っています。

しかし、実は1997年からのデフレ不況のきっかけは消費税引き上げのみではないように思っています。専門的な分析はエコノミスト諸氏に任せたいと思いますが、当時は特別減税打ち切りといった負担増も同時に起こっており、同年後半には三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券の破綻、さらにはアジア通貨危機も勃発しました。デフレ不況の発生にはこれらが複合的に影響したと考えるのがむしろ自然でしょう。これに対して、今回は負担増がないうえ、金融危機もありません。企業も前回の経験を元にかなりの対策を打っているように思えます。以前にもコラムで触れましたが、FIFAワールドカップといった消費喚起材料もあります。予測不可能な国際情勢を除けば、条件は前回よりもかなり良いと言えるのではないでしょうか。消費税増税の影響を楽観的に見られる方の根拠は概ねここにあると言えます。

にもかかわらず、需要の反動減を懸念する声が消えないのは何故でしょうか。思いつくままに理由を挙げれば、①同様の条件にあった2012年のエコカー減税打ち切りでも需要反動減のインパクトは小さくなかった、②10月より消費税引き上げが適応されることとなった住宅は現在においてもまだ相当の反動減に直面している、③3月末の駆け込み需要は物流・配送にも支障を来たすほどに過熱した、といった事象が考えられます。実際のところ、駆け込み需要に過熱感のあった耐久消費材などは、相応の反動があると見ておくべきでしょう。

しかし、見方が交錯している時はむしろ投資の好機でもあります。コンセンサスがない、という状況は方向感の見極めに注力しさえすれば、かなりの投資チャンスを得ることができるためです(コンセンサスが固まっていると、株価がどこまで織り込んでいるかまでを考えなければなりません)。実際に投資行動を起こすかどうかは別にして、是非、ご自身のスタンスをどちらかに決めてみてください。スタンスを決めれば、その後に入ってくる情報への感度は間違いなく鋭敏になっていきます。それはご自身の相場観を研ぎ澄ますうえで絶好のトレーニングになること請け合いです。消費税増税の反動をどう見るか。この訓練は、次回に消費税が10%に引き上げられる時に必ず役に立つものと確信しています。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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